【2026年版】なぜ学校は子供のいじめを隠蔽し続けるのか?構造的な闇と、私たちにできること

学校でのいじめの隠蔽が続く様子を、暗い学校の絵で表現しているイラスト。 教育
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子供のいじめによる自殺が後を絶ちません。

さらに残酷なのは、教師がいじめに気づいていたとしても、有効な手立てを打つことなく、結果として放置されてしまうケースが繰り返されているという事実です。

「教師、校長、教育委員会は一体何をしているんだ?」

ニュースを見るたびに、そう憤る方も多いでしょう。今回は、なぜ学校現場はいじめを隠蔽したがるのか、その構造的な理由を明らかにし、そして私たち一人ひとりに何ができるのかを考えていきます。

この記事は、私が2017年に書いたものをベースに、2026年現在の最新事情(GIGAスクール構想後の変化や深刻な教員不足など)を加筆した完全版です。


いじめは「なくならない」のか?

まず、はっきりさせておきたいことがあります。

「いじめは人間の本能だから、なくならない」——そう言われることがあります。確かに人間社会には競争があり、比較や優劣が生まれます。しかし、いじめは競争とは違います。

いじめとは、権力の濫用です。

クラス内のヒエラルキー、教室という密室性、逃げられない同調圧力、大人の不在——これらが揃った時に発生する、構造的な暴力がいじめなのです。

つまり、環境を変えれば防げます。完全にゼロにすることは難しくても、大幅に減らすことは可能です。そして何より、いじめによる自殺は絶対に防がなくてはなりません。

それなのに、なぜ防げないのか。

そこには「気づかない」という問題以上に、「気づいていても動けない(認めたくない)」学校組織の構造的な闇があります。


教師が「いじめ」を隠蔽する理由:過去と現在

なぜ教師はいじめを見て見ぬ振りをするのか。その理由は、一昔前と今(2026年)とで質が変わってきています。

1. 【過去の呪縛】「発見=指導力不足」という狂った評価システム

かつての教師たちが頑なに「いじめはない」と言い張った最大の理由は、「いじめを発見した教師は『無能』とみなされる」という、狂った評価基準があったからです。

2003年頃から学校現場にも目標管理型の評価が導入されました。当時は「いじめ件数ゼロ」が優秀な学級の証とされていました。正直にいじめを報告すれば、「クラスをまとめられていない」「管理能力がない」とレッテルを貼られ、評価を下げられてしまう。

教師は授業や生徒指導ではなく、事務作業の多寡で評価されます。報告書の出来栄え、提出の早さ——他の教師や校長が直接見られるのは、そこだけだからです。

評価システムは次のように機能していました。

  1. 教師が自己申告シートに目標を記入
  2. 教頭が第一次評価
  3. 学年主任が中間評価(聞き取り)
  4. 校長が第二次評価
  5. 教育委員会が最終評価(相対評価)

この流れの中で、いじめなどのトラブルを抱えた教師はどうなるか。学年主任に相談すれば「自己解決能力がない」と評価され、校長経由で教育委員会まで情報が上がり、給与や昇進に響きます。

だから教師たちは、トラブルが起きても「これは子供同士のふざけ合いだ」「やんちゃな時期だから」と脳内で事実を書き換え、報告を回避してきました。

この保身こそが、かつての隠蔽の正体です。

2. 【2026年の現実】「教員不足」による物理的な限界

では、現在はどうでしょうか。

2013年にいじめ防止対策推進法が成立し、制度上は隠蔽が許されない時代になりました。しかし今は、もっと切実な理由が現場を支配しています。

それは「圧倒的な教員不足(人的リソースの枯渇)」です。

現在の学校現場は、産休・育休の代行講師すら見つからないほどの深刻な定数割れ(欠員)状態が続いています。2024年度時点で、前年と比較して22都道府県・政令市教委が教員不足の状況が「悪化した」と回答しています。

残された教師は、授業、部活動、進路指導、膨大な事務作業に加え、欠員分の穴埋めまで行っています。

ここでクラス内でいじめを認め、法律上の「重大事態」として認定されるとどうなるか。

  • 詳細な記録作成
  • 度重なる緊急会議
  • 第三者委員会の立ち上げ
  • 教育委員会への詳細報告
  • 被害者・加害者双方の保護者対応
  • 警察や児童相談所との連携

これらの膨大な業務が、一気に降りかかります。

今の教師たちには、悲しいことに「いじめを解決するために奔走するだけの、物理的な時間と体力」が残されていないのが現実です。

悪意があるというよりは、キャパオーバーによって「これはまだ重大事態ではない」と問題を過小評価してしまう心理が働いているのです。

元教師の証言

ある元中学校教師は、匿名を条件にこう語りました。

「クラスで明らかにいじめがあると気づいていました。でも、担当していた他のクラスでも問題を抱えていて、部活の顧問もやっていて、毎日終電まで働いていました。いじめを『重大事態』として扱うと、さらに月100時間以上の業務が増える。そう思うと、『もう少し様子を見よう』と先延ばしにしてしまった。その間に、被害生徒は不登校になりました。今でも後悔しています」

これは、個人の責任だけでは片付けられない構造的な問題です。


校長の心情:「退職金」と「ダブルバインド」の恐怖

「校長先生、しっかりしてください!」

保護者はそう思いますが、校長の椅子に座っている人間の心理状態は、想像以上に恐怖に支配されています。

「晩節を汚したくない」逃げ切り心理

校長になるのは、教員人生の最終盤、50代後半です。あと数年で定年退職。目の前には、長年の苦労の対価である「退職金」と、その後の「再任用」がぶら下がっています。

もしここで、ニュースになるような「いじめ自殺」などの不祥事が起きればどうなるか。

管理責任を問われ、懲戒処分を受ければ、退職金は減額、あるいは消滅します。人生のゴールの手前で、すべてが水泡に帰すのです。

「あと2年、何も起きないでくれ……」

この事なかれ主義こそが、多くの校長にとっての生存戦略になってしまっています。

教育委員会の矛盾した命令(ダブルバインド)

教育委員会は建前上、「いじめは隠さず報告せよ」と言います。しかし、本音は違います。

もし校長が正直に「うちは今年、いじめが20件ありました」と報告すると、教育委員会から「貴校の学校経営はどうなっているのか」「管理能力がない」と叱責され、勤務評定が下がります。

  • 報告しない → バレたら隠蔽だと叩かれる
  • 報告する → 管理能力不足だと評価が下がる

この矛盾(ダブルバインド)の中で、多くの校長は「ボヤ(小さないじめ)のうちに、報告せずに内々で消火する」という危険な賭けに出ます。

これが失敗した時、取り返しのつかない隠蔽事件へと発展するのです。


GIGAスクールで「見えない化」したいじめ

さらに問題を複雑にしているのが、デジタル端末です。

かつては「LINE」など、学校外のプライベートなSNSがいじめの温床でした。しかし、GIGAスクール構想で生徒一人一台のタブレット端末が普及した今、学校が配布したチャットツールや授業支援アプリがいじめの現場になっています。

町田市小学生自殺事件(2020年)

2020年11月、東京都町田市立小学校6年の女子児童(当時12歳)が、いじめを訴える遺書を残して自殺しました。学校から配布されたタブレット端末のチャット機能を使って悪口が書き込まれていたとされます。

さらに深刻だったのは、IDは出席番号、パスワードは全員「123456789」という杜撰な管理体制でした。つまり、誰でも他人になりすましてチャットに書き込むことができたのです。

GIGAいじめの特徴

  • 授業中に共有されたファイルに悪口を書き込む
  • 教師に見えないチャットルームで特定の子を排除する
  • 「既読無視」で精神的に追い詰める
  • なりすましによる書き込み

これらは「学校の中」で行われているにもかかわらず、デジタルの壁に阻まれて教師の目には映りません。多忙を極める教師に、毎日全生徒のログを監視する余裕などないのが現状です。

いじめられた子供の声

中学2年生の女子生徒(仮名:ユイさん)は、こう語ります。

「クラスのグループチャットで、私だけ返信がもらえなくなりました。最初は気のせいかと思ったけど、誰かが『ユイって空気読めないよね』って書き込んで、みんなが『いいね』を押していました。先生に相談しても、『チャットは見られない』って言われて。学校に行くのが怖くなりました」

デジタルいじめは、物理的な暴力よりも証拠が残りにくく、教師が介入しづらいという特徴があります。


教育委員会は変わったか?

「教育委員会が機能していない」という指摘を受け、2015年に地方教育行政法が改正されました。教育長の権限強化や、市長が関与する「総合教育会議」の設置など、責任の所在は以前より明確になりました。

かつて橋下徹氏が指摘したような「完全な無責任体制」からは、制度上は脱却しています。

しかし、「事なかれ主義」という組織文化までは変わっていません。

制度が変わっても、運用するのは人間です。「面倒ごとは起こしたくない」という現場の空気は、そう簡単には払拭されないのです。


では、私たちに何ができるのか?

ここまで書いてきたように、学校や教育委員会という組織に「自浄作用」を期待するのは難しいのが現状です。

  • 教師は物理的に余裕がない
  • 校長は保身に走る構造にある
  • いじめはデジタル化して見えにくくなっている

この前提に立った時、私たちには3つのレベルでやるべきことがあります。

レベル1:今すぐ、親ができること(緊急避難)

いじめ問題は奥が深く、簡単に解決策は出せません。しかし、親としてこれだけは念頭に置いておくべきです。

「自分の子供がいじめられる可能性」と「いじめっ子になる可能性」の両方を常に疑うこと。

もし子供が苦しんでいたら、次の選択肢を即座に提示してください。

  • 「学校に行かなくてもいい」
  • 「転校してもいい」
  • 「学びの多様化学校(旧:不登校特例校)という選択肢もある」
  • 「自宅でオンライン学習することもできる」

文部科学省は2016年の通知で、「不登校とは、多様な要因・背景により、結果として不登校状態になっているということであり、その行為を『問題行動』と判断してはならない」と明確にしています。

いじめられている子供が、自分自身の力で状況を変えることは困難です。また、担任教師が必ずしも味方になってくれるとは限りません。

「学校という狭い世界だけがすべてではない」「他にも居場所はある」

そう親が心から伝え、実際に別の選択肢を用意してあげることで、子供の心に「死ぬくらいなら逃げればいい」という余裕が生まれます。それこそが、最悪の事態を防ぐ唯一のストッパーになります。

レベル2:学校・教育委員会への建設的な働きかけ

同時に、学校や教育委員会に対して、感情的にならず建設的に働きかけることも重要です。

効果的な働きかけ方:

  1. 記録を残す:いじめの内容、日時、場所、関係者を詳細に記録
  2. 文書で伝える:口頭だけでなく、メールや手紙で学校に伝え、証拠を残す
  3. 第三者を巻き込む:スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、教育委員会、場合によっては弁護士
  4. 期限を切る:「〇日までに対応をお願いします」と明確にする
  5. 感謝と要求のバランス:教師を敵に回さず、「協力してほしい」姿勢を示す

学校側も完璧ではありませんが、保護者が冷静に、しかし毅然と対応することで、動かざるを得なくなります。

レベル3:社会全体で制度を変える(中長期的改革)

個人の自衛だけでは、次の世代も同じ苦しみを繰り返します。だからこそ、社会全体でこの狂った構造を変えていく必要があります。

即効性のある改革

1. いじめ認知件数を「教師の早期発見能力」としてプラス評価に転換

文部科学省は既に方針転換を進めています。令和5年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」では、いじめの認知件数が多い学校について、「いじめを初期段階のものも含めて積極的に認知し、その解消に向けた取組のスタートラインに立っている」と極めて肯定的に評価すると明記されています。

この方針を、すべての教育委員会が実際の評価に反映させることが急務です。

2. スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置拡充と待遇改善

現状では、スクールカウンセラー(SC)は週1回程度、スクールソーシャルワーカー(SSW)は中学校区ごとに週3時間が基本です。しかも、94%が非正規雇用という不安定な状況です。

必要な改革:

  • 全校への常駐化(最低でも週3日以上)
  • 常勤化と処遇改善
  • 教師とは独立した相談窓口の確立

3. いじめ対応を「チーム学校」全体の課題へ

担任一人に責任を押し付けるのではなく、学年主任、養護教諭、SC、SSW、管理職が連携して対応する仕組みを義務化。

中長期的な改革

1. 教員定数の法改正

日本の1クラスあたりの生徒数は小学校で27.2人、中学校で32.1人。OECD平均は小学校で21.3人、中学校で22.9人です。この差を埋めるだけで、教師の負担は大幅に減り、一人ひとりの子供に目が届くようになります。

2. 評価システムの抜本的見直し

  • いじめ隠蔽に対する厳格なペナルティ
  • 早期対応への明確な加点制度を導入

3. デジタルいじめ監視システムの導入

現在、一部の自治体や学校では、チャット機能に不適切なワードが使われたらアラートを出す仕組みや、教師がチャットの書き込みを確認できる設定にするなどの対策が検討・実施されています。

プライバシーとのバランスを取りながら、危険な兆候を早期に察知する仕組みが必要です。ただし、「AI監視システムの全国的な導入」については、まだ試験段階であり、広く実施されているわけではありません。今後の技術発展と倫理的検討が求められます。

4. 給特法改正による教員の処遇改善

2025年6月11日、給特法改正法が成立しました。教員の残業時間管理と処遇改善の方向性が示され、長時間労働の改善に向けた一歩が踏み出されました。

私たち一人ひとりができること

  • 選挙で、教育政策を重視する候補者を選ぶ
  • 地域の教育委員会の会議を傍聴し、声を上げる
  • SNSやメディアで、建設的な議論を広げる
  • 学校のPTA活動に参加し、内側から変化を促す

変化の兆しは、確かにある

確かに今の構造は絶望的です。しかし、変化の兆しもあります。

  • 文部科学省が、いじめ認知件数が多い学校を『積極的に取り組んでいる』と評価する方針を明確化しました。
  • 教員不足への危機感から、国も処遇改善に動き出しました。2025年には給特法改正法が成立し、教員の勤務時間管理と残業代支給の方向性が示されました。
  • 学びの多様化学校(旧:不登校特例校)やフリースクールなど、多様な学びの場も増えています。文部科学省も不登校を「問題行動」とみなさない方針へ転換しました。
  • いじめの認知件数は2024年度に過去最多の76万9,022件となりましたが、これは隠蔽ではなく、早期発見が進んでいる証拠とも言えます。

完璧な制度改革を待っていたら、目の前の子供は救えません。

だから親は今すぐ逃げ道を作る。同時に、社会全体でこの狂った構造を変えていく。両方やるんです。

あなたの子供を守りながら、次の世代のために声を上げる。それが2026年を生きる私たちの責任ではないでしょうか。


最後に

いじめによる子供の自殺は、「不可避な悲劇」ではありません。

それは、大人たちが作り上げた歪んだ評価システム、組織の保身、そして社会の無関心が生み出した、防げるはずだった悲劇です。

教師を責めるだけでも、親だけに責任を押し付けるのでもなく、私たち一人ひとりが「この構造はおかしい」と声を上げ、変えていく必要があります。

あなたの子供が、あなたの隣人の子供が、明日も笑顔で生きられる社会を作るために。

今日から、できることを始めませんか?

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


【参考資料・相談窓口】

相談窓口

主要参考資料

文部科学省

  • 「いじめ防止対策推進法」(平成25年9月28日施行)
  • 「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成25年10月11日文部科学大臣決定、最終改定 平成29年3月14日)
  • 「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(平成29年3月)
  • 「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」(令和6年10月31日)
  • 「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」(令和7年10月)
  • 「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)
  • 「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」(令和5年3月31日)

こども家庭庁

  • 「こども家庭庁における不登校対策」
  • 「地域における不登校のこどもへの切れ目ない支援事業」

法令・制度

  • 「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」(平成27年4月1日施行)
  • 「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(平成28年法律第105号)
  • 「給特法改正法」(令和7年6月11日成立)

いじめ認知に関する統計

  • 令和5年度:小・中・高等学校および特別支援学校におけるいじめ認知件数 732,568件
  • 令和6年度:同769,022件(過去最多、前年度比5.0%増)
  • 重大事態発生件数:令和5年度1,306件 → 令和6年度1,405件

GIGAスクール関連

  • 「GIGA端末のチャット機能『教師が確認できる設定を』文科相」(2021年11月10日)
  • 東京都町田市立小学校いじめ自殺事件(2020年11月)に関する報道各社記事
  • 「GIGAスクール構想下のネットいじめ」に関する研究・報道

スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー

  • 全国のスクールソーシャルワーカー数:3,852人(2021年度)
  • 配置:全国の中学校区ごとに週3時間が基本
  • 雇用形態:94%が非正規雇用

OECD教育統計

  • 日本の1クラスあたり生徒数:小学校27.2人、中学校32.1人
  • OECD平均:小学校21.3人、中学校22.9人(2017年データ)

その他

  • 国立教育政策研究所「生徒指導リーフ」シリーズ
  • 埼玉県教育委員会「一人一人の社会的自立に向けた児童生徒支援ガイドブック」(令和6年3月)
  • 各都道府県教育委員会の不登校対策・いじめ対策資料

これらの資料は、文部科学省、こども家庭庁、各都道府県教育委員会の公式サイトで閲覧できます。

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