脳が大きいほど頭がいいの?中学生にも簡単にわかる脳と知能の話

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「脳が大きいほど、頭がいいの?」

こう聞かれると、なんとなく「そうかも」と思いませんか。

脳は考えるための大事な場所です。だったら、脳が大きいほど頭がよさそうな気がします。

でも、ここでいきなりクイズです。

人間・ゾウ・クジラのうち、いちばん脳が重いのはどれでしょう?

人間・ゾウ・クジラのうちどれの脳が一番大きいかを考えるクイズ風イラスト

正解は……人間ではありません。

ゾウの脳は約5kg、大型のクジラでは7〜9kgにもなります。人間の脳は約1.4kgです。ペットボトル1本分より少し重いくらいです。

では、ゾウやクジラは人間より頭がいいのでしょうか。

もちろん、ゾウやクジラはとても賢い動物です。ゾウは記憶力が高く、仲間とのつながりが強い動物として知られています。クジラは複雑な鳴き声で仲間とやりとりします。

でも、文字を作ったり、学校を作ったり、スマホを作ったりはしていません。

つまり、脳が重い=頭がいい、にはならないのです。

この記事では、「なぜそうなのか」を順番に説明していきます。


体が大きいと、脳も大きくなる

人間とゾウとクジラの脳の大きさを比較した図解イラスト

ゾウやクジラの脳が大きい理由の一つは、単純に体が大きいからです。

ゾウを想像してみてください。体重は4〜6トン。足だけでも人間の全体重より重いです。あの巨大な体を動かすには、全身から送られてくる大量の情報を処理しなければなりません。

「右前足をどこに置くか」「鼻をどう動かすか」「周りに敵はいるか」「仲間はどこにいるか」、こういった情報を常に処理しています。

クジラも同じです。体重が何十トンにもなる巨体を動かすだけで、膨大な情報処理が必要です。

つまり、大きな脳の一部は「体を動かすための脳」です。考えるためだけに使われているわけではありません。

だから、脳の重さだけを比べて「どちらが頭がいいか」を判断するのは、土台から間違っています。


人間の脳がすごい理由は「大きさ」じゃない

人間が言葉や文字を使って知識を学び受け継ぐことを示すイラスト

では、人間の脳は何が特別なのでしょうか。

人間の脳は、体の大きさのわりにかなり大きいです。でも、それ以上に大事なのが大脳新皮質という部分の発達です。大脳新皮質とは脳の表面近くにある部分で、考える・言葉を使う・計画する・他者の気持ちを想像するといった働きに関係しています。人間はここが特に発達しています。

そのおかげで、人間には他の動物と比べても特に発達した力があります。

たとえば、あなたは恐竜を見たことがありません。でも、恐竜のことを知っていますよね。

これはなぜかというと、昔の人が化石を調べて研究し、本や映像や授業にして残してくれたからです。人間は「自分が直接経験していないこと」を言葉や文字を通じて学べます。そして学んだことを次の世代に渡せます。

この力があるから、何千年もかけて知識が積み重なり、科学や医学やテクノロジーが発展してきました。

これは脳の「大きさ」ではなく、脳の「使い方と構造」によるものです。


脳はチームワークで動いている

班活動の例で脳のつながり方の大切さを説明するイラスト

脳の話で、もう一つ大事なことがあります。

脳の中には約860億個もの神経細胞があると言われています。でも、大切なのはその数よりも、細胞どうしがどうつながっているかです。

クラスで班発表をするときをイメージしてみてください。

5人いても、誰が何をするか決まっていない、情報が共有されていない、バラバラに動いている…これでは良い発表になりません。

反対に、4人でも役割が明確で、情報を共有して、お互いの動きを見ながら動ける班なら、まとまった発表ができます。

脳も同じです。神経細胞がうまくつながって、情報をスムーズに流せるかどうかが重要です。大きさよりも、つながり方と働き方が「頭のよさ」に関係しています。


人間同士で比べると?

脳の大きさと知能には少し関係があるが他の要素も大切だと示す図解イラスト

ここまで動物の話をしてきましたが、「じゃあ人間同士では?」と気になりますよね。

研究では、MRIで測った脳の大きさと知能テストの成績には、少しだけ関係があるとされています。

バスケットボールで言えば、身長が高いほうがリバウンドで有利な場面があるのと似ています。でも、身長が高ければ必ずうまいわけではなく、ドリブル・シュート・判断力・練習量なども大きく影響します。

脳も同じです。大きさは関係する要素の一つではありますが、神経のつながり方、これまでの経験、学習の仕方、睡眠や運動などの生活習慣も大きく関係しています。

しかも、見た目の「頭の大きさ」は脳の大きさとは別の話です。顔の骨格・体とのバランス・髪型などによって、頭は大きくも小さくも見えます。帽子のサイズが大きくても、脳の大きさも知能もわかりません。


「頭がいい」ってなんだろう

最後に、少し考えてほしいことがあります。

「頭がいい」という言葉、みんなわりと気軽に使いますよね。でも、よく考えると、頭のよさにはいろいろな種類があります。

計算が速い。文章を読むのが得意。人にわかりやすく説明できる。新しいアイデアを思いつく。人の気持ちをよく理解できる。失敗してもあきらめずに考え続ける。

どれも「頭のよさ」と言えます。

学校のテストで測れるのは、そのうちのほんの一部です。

だから、「脳が大きいほど頭がいい」という話は、二重の意味で単純すぎます。「脳の大きさ」で知能を決めようとしている上に、「知能」をテストの点数だけで考えてしまっているからです。


まとめ

「脳が大きいほど頭がいい」は正しくありません。

ゾウやクジラは人間より大きな脳を持っていますが、それは体が大きいからでもあります。脳の重さだけで知能は比べられません。

人間の脳がすごいのは、大きさよりも構造と使い方、とくに言語・抽象思考・知識を蓄積して次の世代に渡す力にあります。

人間同士で見ても、脳の大きさと知能には弱い関係があるにすぎず、神経のつながり・経験・学習の仕方なども大きく関係しています。

「大きさ」より「つながり方と使い方」。

これが、脳と知能の関係を一言で言うなら、いちばん近い答えだと思います。

参考までに。それでは!

もう少し詳しくこのテーマについて知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください
頭が大きい人は本当に頭がいい?脳の大きさとIQの関係をわかりやすく解説


参考文献

  • Nave, G. et al. (2019). Are Bigger Brains Smarter? Evidence From a Large-Scale Preregistered Study. Psychological Science.
    https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0956797618808470
  • Manger, P. R. et al. (2019). The allometry of brain size in mammals. Journal of Mammalogy.
    https://academic.oup.com/jmammal/article/100/2/276/5486921
  • Azevedo, F. A. C. et al. (2009). Equal numbers of neuronal and nonneuronal cells make the human brain an isometrically scaled-up primate brain. The Journal of Comparative Neurology.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK207181/

コメント

  1. 2ro- より:

    結局は、「所得が高い世帯の子供はiqが高い」「体格がよい子供は賢い」という研究と同じだろう。
    子供の頃に体格がよいのは豊かな暮らしの証拠であり、このような過程では教育面への投資額も非常に高くなる。
    (幼少期の栄養失調で、年齢が下がれば下がるほど、悪い影響を及ぼすのと同じ)

    ちなみに、単純に”大きさだけ比べた”シンプルな研究は「人種差や性差を除外した場合」だ。
    体格で補正した場合性差がほぼ消えてしまうため。
    また、「全く同質の脳と仮定した場合」という前提がある。
    しかし、2017年イギリス5216人を対象とした調査では、女性のほうが皮質が厚いという結果が出ており、
    質の違いがあるため、上の仮定や、「男性のみを対象とした調査」の研究を普遍的な結果とするのは不可能だろう。

    この記事の研究の原文ソースが発見出来なかったのだが、それらしき研究では全体の大きさではなく「皮質の厚さ」を調査しているようだ。

    • 福山 福山 より:

      コメントありがとうございます。

      この記事は池谷裕二先生の本を参考にしています。『脳には妙なクセがある』に書いてあったはずです。
      研究論文を提示できずに申し訳ございません。

  2. 2ro- より:

    申し訳ないです、重複投稿してしまったので、最初のを削除していただければ幸いです。

    日本語訳された科学の本には必ず「どこから引用された情報か」の詳細が全て載っていて、
    それだけでかなりのページ数になることも多いです。
    しかし日本で出版された書籍は、後半ページに出典や引用論文を載せる必要がないため、
    信憑性の確認が難しく、書かれな内容以上のことを調べたくても困難だったり、不可能だったりします。
    故にこの国では健康や医療など「怪しい科学」は非常に多く出回っていて、
    最近googleでは、問題となっている健康や医療に関する偽科学サイトに対策がなされたようです。

    • 福山 福山 より:

      おっしゃる通りだと思います。

      ただ、あえて反論っぽいことをさせて下さい。(2ro-様の考えとほぼ同意見なのですけど)

      私は「怪しい科学」が出回っているのは、出典や引用論文を載せるかどうかにはあまり関係がないと思っています。
      というのも、結局のところ、論文の正確さを読み取れるのは“その道の専門家”だけだからです。

      専門家の方に「エビデンスはこれです」と言えば分かってもらえますが、普通の人に「これがエビデンスです」と言っても、「エビデンスってなに?」となると思うんですね。
      また、普通の人が論文を読めたとしても、論文の信頼性までは理解できません。

      そうであるならば意図的に自分の都合良いエビデンスばかり集めることも可能なわけでして・・・エビデンス提示にどこまでの意味があるのか、サイト運営者としては葛藤しているところです。
      2ro-様は頭の良い方だと思います。そういう方なら、エビデンスを提示しようとしなかろうと『自分の頭で判断できる』はずです。しかし、そんな判断ができる人はごくごく少数でして、普通の人は怪しい情報だろうと、有益な情報だろうと『信じる』しかできないと思うんです。(エビデンスがいらないという意味ではありません)

      エビデンス提示も大切ですがそれだけでは足りません。人々のリテラシーを高めることも大切なのではないかと思い、このようなサイトを運営しています。(微力すぎるのですが^^;)

      グーグルの対策も存じております。
      その対策の結果何が起こったかというと、確かに個人が発信している情報は検索上位に表示されなくなりました。
      そして、国が運営するような、いわば“権威あるサイト”が上位に表示されております。

      では国が運営しているサイトは大丈夫なのか?というと、必ずしもそうではないと思います。
      最近のニュースを見れば分かる通り、公務員組織の腐敗具合が顕在化されております。

      グーグルができたことといえば、「国の情報なら大丈夫っしょ!」という、言わば丸投げであり、それは権力の肥大化を招くのではないかと私は思っています。
      権力の肥大化が進めばそれは組織の腐敗につながります。私はここにグーグルの限界を感じました。

      長くなってしまいました^^;申し訳ありません。

  3. ごんちゃそ より:

    こんばんは!いつも語学関係の記事参考にさせて頂いてます!気になって飛んでみたのですがペンシルバニアのリンク先が登録必須?で読めませんでした・・
    詳しく書いている英文サイトを見つけたのでどんな内容かまとめてみました~
    ttps://www.sciencedaily.com/releases/2018/11/181130153847.htm
    こちらです。

    ーーーーーーー
    ●13,600人以上の人々から得られた教育達成度測定とMRIの情報を使用した。

    ●この調査では、サイズはテストパフォーマンスのばらつきの約2%に影響する可能性。
    この1つの要因以外のものが、認知テストへの影響の98%占めることを意味する。

    ●研究者らは、認知能力の測定は難しい課題であるという。脳の容積と「頭脳」の間の包括的な相関関係は弱いものであると強調した。

    ●学歴の差は小さく、(100平方センチメートル)脳が増えるごとに、平均的な人の学校教育年数を5ヶ月未満増やすのみであった。

    ●分析での発見によると、身長に比例し男性と女性の間で脳の量に違いがあるが、認知能力の違いに繋がらなかった。
    ●他の研究では、女性は大脳皮質(cerebral cortex)、すなわち脳の前部の外側の層が男性よりも厚くなる傾向が報告されており、これにより認知能力に効果的な差が見られない事実を説明する可能性がある。

    ●研究者によると、「実際には状況はもっと複雑になる可能性がある。遺伝性の高い、より大きな脳がより良い親になることに関連している可能性を考えます。
    この場合、より大きな脳とテストパフォーマンスの関連は、子育てが認知に及ぼす影響を単に反映するだけで、これ以上は研究を進めなければ達成できないでしょう。」

    ●追跡調査では、脳の特定の領域やそれらの間の接続性が認知に大きな役割を果たすかどうを判断するためにズームインする予定です。

    ーーーーーーーーー

    他にもどんな感じで調査した内容なのか気になる方がいらっしゃいそうなので貼っておきます~
    自己産なので直訳に近い堅苦しい文章ですがもし記事内で必要でしたら(ぜひとも!w)コピペして使っちゃってくださいませ・・!でしたら嬉しいです!

    • 福山 福山 より:

      ごんちゃそさん、コメントありがとうございます。
      いやー、こんな有用なサイトがあるのですね!知らなかったです!
      素晴らしい情報ありがとうございます!!!

    • イルカ より:

      皮質厚の性差は男性の絶対体積や相対体積の高さに比べるとはるかに効果量が小さいように見える
      検査もそこまで難しいように感じない
      まあ結局こういうのは前提に依存しますよね
      例えば相関関係を見るものを賃金や社会的地位にすれば 男性の脳サイズと社会的地位や賃金の高さから
      相関は高くなるでしょうね

  4. ごちゃそ より:

    使っていただいてありがとうございます(‘ω’)ノ
    sciencedailyは元研究にもリンクしてくれて、評判的にも信頼できる老舗サイトだと思います。

    お礼だけのコメなので返信不要です~公開せず消しちゃってください!
    ではでは!

  5. anonymous より:

    最近この分野の科学者によるレビューを読みました。
    このテーマは『出版バイアス』が大きくて、ある程度関連が出ると文献やニュースで大きく取り上げられて研究が過大評価されるけれど、有意でない関連や関連無しの研究は省かれてしまうそうです。
    英語圏の人々すらそうなので、非英語ネイティブ圏はより困難に・・

    • 福山 福山 より:

      コメントありがとうございます。
      なるほどです。出版バイアスもあるのですね・・・。
      この時代にどうやって情報と向き合えばいいのでしょうか。頭が痛くなるばかりです。
      メタ分析を柱としつつ、メタ分析の結果も疑う態度を忘れないように・・・ってとてもじゃないですが、専門家でない人には厳しすぎますね。
      ポストトゥルースの時代から抜け出すのは「勉強して賢くなろうぜ!」では不可能そうだなーと思うばかりです。

      貴重な情報、ありがとうございました。また何かあればコメントいただけると嬉しいです!

  6. より:

    この手の研究は「人間が1番賢い」「脳の大きさで賢さは変わらない」という前提で行われるため当てにならないと思います。
    クジラやゾウは脳の分体が大きくて人間より賢くないって言われてるから人間より賢くないってのは無理矢理すぎるでしょう。
    2%でも脳のサイズが知能に影響するなら十分「脳と賢さは比例する」と言えるはずです。

    • 福山 福山 より:

      コメントありがとうございます。
      このコメントで何を伝えたいのかが、よくわかりません><
      申し訳ございません。