非認知能力を鍛える方法とは?→環境の大切さ【ペリープロジェクトから学ぶ】

非認知能力 鍛える教育
スポンサーリンク

非認知能力ってよく聞くけれどなんなの?非認知能力を鍛える方法とかあるの?

そんな疑問に答えます。

非認知能力を鍛える方法はあります。その方法をこのページで解説したいと思います。前半で『非認知能力とは?』、後半で『非認知能力の育み方』について書いています

 

参考にした本はこちら。

教育分野の研究事例をまとめた1冊で「どうやって非認知能力を鍛えていくのか?」に主眼が置かれていた本です。

スポンサーリンク

非認知能力とはなにか?

非認知能力とは、IQなどの認知能力とは違い、

  • 努力できる
  • 我慢できる
  • やり抜くがある
  • 自制心がある

などの“ペーパーテストでは測れない力”のことです。

ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンさんが「子どもを成功させたいなら、認知能力より非認知能力の方が大切だ」と指摘して以来、非認知能力の大切さが問われています。

 

これにより非認知能力の大切さがわかったものの、非認知能力の鍛え方ついては十分に理解されていません。本書はそれについて具体的に触れていました。

現場とを政策立案者の双方に実践的なガイドを提供することを目的としている。「それで、結局どうすればいいのですか?」という質問に答えようとするひとつの試みである。p19

ペリープロジェクトから学べる非認知能力の鍛え方

ジェームズ・ヘックマンさんが行ったプロジェクトに“ペリープロジェクト”というものがあります。

これは就学前の子どもに良質な保育と教育を施すプロジェクトで、これを受けた子供達は、

  • 高校卒業率が高く
  • 犯罪率が低く
  • 生活保護率が低く
  • 年収が高い

ということが分かりました。

このプロジェクトにより、就学前の適切な教育は非認知能力を高め、その後の人生に大きな影響を与えることがわかりました。

ペリープロジェクトは失敗だと思われていた?

ペリープロジェクトの当初の目的は、低所得層の子どもの知能を向上させることにありました。知能を高めることこそが、貧しい子どもたちをアメリカ社会で成功させる方法だと信じられていたからです。

 

ペリープロジェクトに参加した子どもたちは、確かに、小学1・2年生では目に見えてテストの結果がよくありました。しかし、3年生になった頃には、ペリープロジェクトを受けていない子とIQテストのスコアがほとんど変わらなくなっていました。だから、ペリープロジェクトは失敗だと考えられていたのです。

 

しかし、ペリープロジェクトの効果を長期的に見てみると、将来に有望であることが分かったのです。ヘックマン博士はペリープロジェクトで養われた能力のことを『非認知能力』と名前をつけました。

非認知能力の鍛え方について

ここから非認知能力の具体的な育み方について書いていきます。

非認知能力は環境によって育まれる

子供の非認知能力を伸ばしている優秀な人々を調べた結果、筆者は次のような結論に至っています。

私の至った結論はこうだ。「非認知能力は教えることのできるスキルである」と考えるよりも、「非認知能力は子供を取り巻く環境の産物である」と考えた方がより正確であり、有益でもある。p27

大切なことは、非認知能力を教えるのではなく、『非認知能力が育つ環境を提供する』ということです。そのため、最初に働きかけるべきことは、子供自身にではなく、子どもの環境に働きかけるべきなのです。

非認知能力を伸ばすために与えたいもの

子供が成長できる環境を阻害するものは何なのでしょうか?

その1つは健康に関するものです。例えば栄養価の低い食事しか取れない子供たちは、言うまでもなく成長が阻害されます。他には、知的刺激です。幼い頃から本や教育玩具を与えられた子供とそうでない子供では、成長が変わってしまうのも当然のことです。

 

栄養が足りないこと、知的刺激が少ないこと、これらの問題はこどもの非認知能力を阻害する大きな原因になります。

非認知能力を伸ばすために一番大切なこと→ストレスを減らすこと

しかし、最近の研究により、神経科学者や心理学者、その他の研究者がもっとも子どもの発達を左右するのは、「ストレスだ」と言う結論に至っています。

 

長期にわたりストレス受けた子供たちは、心も体も健全な成長を阻害されてしまうのです。

ストレスは子どもの脳の発達を阻害する

ストレスは短期的に見れば環境的なメリットもあります。例えば危険なものから逃げたりすることです。

 

しかしストレスが長期にわたり与えられ続けると、身体に様々な悪影響を与えます。そして最も厄介だとされていることが、“ストレスは脳の発達に影響を及ぼす”ことです。

 

幼い時期に高レベルのストレスを与え続けられると、前頭前皮質と呼ばれる知的機能を司る脳の大切な部位の発達が阻害されます。そうなると感情面や認知面での制御能力が発達しません

 

前頭前皮質は脳の高度な知的能力、作業記憶、自己調整、認識の柔軟性などに関係しており、これらの各能力が粘り強さやレジリエンスなどの非認知能力の支えとなります。

 

だからこそ、幼児の時の強いストレスが、その後の社会生活に大きな影響を与えてしまうのです。

子どものストレスは母親がケアできる

では、ストレスに対してどうするべきなのでしょうか?

ここでも母と子の関係がとても重要だということが分かってきています。

マギル大学の研究者らは、母ラットの特定の行動が、子ラットの DNA の配列に起こるメチル化に影響を与えることは明らかにした。子ラットがストレスを受けたときに母ラットが示す温かく繊細な対応、とくにリッキング・アンド・グルーミングと呼ばれるなだめるような行動が、 DNA 上で海馬を制御する部位のメチル化を抑制するのだ。海馬は、成長したときにストレスホルモンを処理する部位だ。まだ検証段階だが人間の場合にも同様の効果があると見られている。p34

母親の大切さは多くの研究で明らかになっています。これはまだラットの研究ですが、たぶん人間にも当てはまるでしょう。

トラウマが子どもに与える影響

子供時代の逆境(ACE)が与える影響についての研究があります。

ロバート・アンダさんとヴィンセント・フェリッティさんは1990年代に1万7千人の患者を対象として、子どもの頃のトラウマが与える影響について調査しました。(10項目の質問をし、そのうち3つが虐待について、2つがネグレクトについて、残りの5つは家庭内の深刻な問題で、例えば、DVを目撃した、両親が離婚した、家族の中に刑務所に入っている人や精神疾患のある者がいる、アルコール・薬物依存を抱える人がいる、などです)

 

その結果、子供の頃に経験したトラウマの数と、成人後にかかった内科疾患の間に相関関係が見つかりました。

 

トラウマの数が4つ以上ある人は、

  • ガンになる確率が2倍
  • 心臓病にかかる確率が2倍
  • 肝臓病にかかる確率が2倍
  • 肺気腫や慢性気管支炎になる確率が4倍

ということがわかりました。

 

病気以外では、

  • 喫煙者の割合が2倍
  • アルコール依存症になる確率が7倍
  • 15歳未満で生体験をする確率が7倍

となっています。

 

他にも、トラウマが0の児童のうち学校で問題行動を起こす子供は3%だけでしたが、4つ以上ある児童は51%にのぼります。

両親の口論が乳幼児に与える影響

生後6ヶ月から12ヶ月の乳幼児を対象に両親の口論が与える影響を、機能的磁気共鳴映像装置(fMRI)を用いて脳波を調べた研究があります。

 

その結果、

  • ほとんど口論をしない家庭の乳幼児→怒声に対して穏やかな反応
  • 頻繁に口論する家庭→感情、ストレス反応、自制に関わる脳の部位にはっきりとした反応

が見られることが分かりました。

 

小さい頃に両親の与える影響はかなり大きいということです。

 

「口論くらい・・・」と、口論を甘く見ないほうがいいです。乳幼児にとってはそれが強いストレスになるのですから。

1950年代にイギリス、カナダ、アメリカの研究者らが発見したところによれば生まれて最初の12ヶ月のうちに温かく気配りの行き届いた子育てを経験した子どもは、多くが親と強い結びつきを形成する。研究者たちはこれを「安定したアタッチメント」と名付けた。この結びつきによって、子どもの心に安心感と自信が深く根付く。心理学の用語でいう「心の安全基地」ができるのだ。これがあると、成長した時に自力で思い切って世の中の探検へと乗り出していけるようになる。そうした自信と自立は現実の世界で役に立つ。p53

1970年代にミネソタ大学で始まった長期にわたる研究によれば、一歳の時点で母親と安定したアタッチメントを築けた子供たちは、その後の成長で、集中力や好奇心が高く、レジリエンスも強く、高校を中退することなく卒業する確率が著しく高かったそです。

おわりに:非認知能力を育むためには環境を整えること

このページでは非認知能力について書いてきました。非認知な能力ゆえ、教えることは困難になります。

 

だからこそ、親ができることといえば、よく言われる当たり前のことです。

  • 子どもに愛情を持って接する
  • 父と母で口論ばかりしない
  • 健康的な食事を与える
  • 知的好奇心を満たすためにいろいろな経験をさせる

など、本当に当たり前のことになります。でも、当たり前のことをやるのが難しいのですね・・・。どうぞよしなに。

 

それでは!

コメント