アメリカで行われたスケアード・ストレートプログラムをご存知でしょうか?教育関係者であれば知っておくべき話かと思います。
結論をまず書いておきます。
- 非行少年に対する矯正教育プログラムを1970年代に開始
- 非行少年を刑務所に連れていき、重犯罪者と面会させ刑務所生活の恐ろしさについて話をする
- その結果・・・非行少年の犯罪率が増えた
という驚くべき話です。
直感的に「これはいい!」と思えるようなプログラムが、全くの逆効果になる、ということがあるのです。以下ではもう少し具体的にスケアード・ストレートプログラムについて書いていきます。
*記事の内容を簡単に動画でまとめています↓↓↓
スケアード・ストレートプログラムとは?
子どもにスケアード(恐ろしい)にストレート(直面)させ、正しい行動をとる必要性を学ばせるものが、スケアード・ストレートプログラムです。
非行少年を刑務所に連れていき重罪犯と面会させる
非行少年を矯正するために、スケアード・ストレートプログラムが実施されました。プログラムの内容↓
- 非行少年を刑務所に連れていく
- そこで重罪犯に面会させる(重罪犯はサクラ)
- 重罪犯(サクラ)は、犯罪内容や刑務所の生活などについて脅しながら説明する
非行少年に重罪犯の話を聞かせることで、「悪いことしたら刑務所に入って大変な生活を送るんだ・・・。悪いことはもうやめよう。」と思わせるプログラムです。普通の感覚からすると、刑務所に入りたくないので犯罪行為はやめそうですよね?
その結果、非行少年の犯罪率は上がった
- スケアード・ストレートプログラムを受講するグループ
- 受講しないグループ
に分けて、スケアード・ストレートプログラムが『犯罪に関わる確率』にどの程度関係するのかを調査しました。
その結果・・・驚くべきことに、スケアード・ストレートプログラムを受講した少年たちの方が、その後の人生の犯罪率が高いことが分かりました。
直感的「効果がありそう」と思われるプログラムでさえ、実際には効果がないことがあります。そしてなんなら、悪い効果をもたらすこともあるのです。教育者としてこのプログラムの結果については知っておくべきでしょう。
若者を更生させようとする善意の気持ちが、逆に若者たちの犯罪率を高めてしまうのは皮肉なことです。
交通事故の現場を再現する交通安全教室は正しいのか?
交通安全教室では、交通事故の恐怖を疑似体験させるとして、スケアード・ストレートの手法が用いられている場合があります。スタントマンを使って、車にはねられる事故現場を再現しようとするものです。
交通安全教室の効果は科学的に検証されていないため、このスケアード・ストレートが子どもたちに悪い影響を与えるとは断言できません。しかし、今見てきたように、犯罪率についてはスケアード・ストレートプログラムは逆効果であったことが分かっています。
交通安全教室の効果が科学的に検証されていないなか、子どもたちに交通事故の現場を再現させ、恐怖の体験をさせることは子どものためになるのでしょうか?そこに税金を投入して行うべき教育プログラムなのでしょうか?
おわりに
直感と反することを腑に落とすのはなかなか難しいです。しかし科学の力によって分かってきていることがあるのですから、それを信じなくてはいけません。
- 怖い体験をさせたら、人は悪いことをしなくなるでしょ!→逆効果
- 罰を重くしたら、人は悪いことをしなくなるでしょ!→効果なし
などなど、直感的には「それいいじゃん!」と思えるようなことでも、効果がなかったり、逆効果であることが科学的に分かってきています。
もちろんこれらが100%当てはまるわけではありません。『確率的に考えて悪い(意味のない)ことが多い』ということです。これだけ科学的な知見が集まった現代において、それらを無視して、
- 直感
- 精神論
- 根性論
で教育を行うのはどうかと思うわけです😅
ぜひ、教育に科学的知見を!それでは!
*参考
https://crimrc.ryukoku.ac.jp/campbell/library/pdf/crimejustice/cj8_jp.pdf
*オススメ書籍
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