「子どもを東大に入れたいんや!それが子どものためなんや!」
子を思う親として、子どもの幸せを願うのは当然のことでしょう。となると、真っ先に『勉強』というワードが頭に浮かんできます。YouTuberなど昔では考えられなかったような職業が増えていますが、やはりまだ『学歴(≒勉強)』は必要です。というわけで日本No. 1の大学である東大へ子どもを入学させたいわけです。
「東大入学=将来安泰や!」と思えそうです。そんな一般的な考えに反して、「もしかしたら不幸せになるかもよ?」と一石を投じる本がこちらです↓
「我が子を東大に!」と考えている親御さんにとって、一読の価値ある本かと思います。東大卒の著者が、社会に出て厳しい生活をしている東大卒業者を取材している本です。
1. 『東大なんか入らなきゃよかった』の感想
冒頭で以下のようなことが書かれています↓
東大は人生の幸福を決して約束などしてくれない。むしろ逆に、 東大に入ったある種の人間は、東大に入ったがゆえに辛い人生を送るはめになる。個人的な感覚では、「人生が辛くなってしまった人の方が多いのではないか?」とさえ思う。p7
なぜ東大に入ったがゆえに辛い人生を送ることになるのでしょうか?
簡単に言ってしまえば、『東大卒』というレッテルに苦しむことになるからです。もちろん全員が東大卒というレッテルに苦しむことはありません。本物の天才たちは、東大卒というレッテルに苦しむことなく、なんなら「さすが東大卒」と言わせしめるほどの能力を振るい、社会で活躍していきます。しかし、そんな東大卒は一握りなのです…。
1.1. 東大生の3つの型
著者は、本書で東大生を3つの型に分けています。
- 天才型
- 秀才型
- 要領型
の3つです。
「さすが東大卒、スゲー!」のイメージを持たれるのは天才型です。天才型は東大生の中で1割ほどだと著者は言います。残りの9割は、世間一般からすれば頭がいいけれど、『凡人』なのです。
1.2. 絶望する凡人の東大生
- 地道な努力を重ね、東大入学の道を切り開いた秀才型の東大生。
- 受験というゲームの攻略法を見つけた要領型の東大生。
彼らは東大入学後に苦労することになります。(特に要領型は、基礎的な学力や教養が不足しており、大学で行われる本格的な学問についていけなくなります。)
秀才型、要領型の東大生は、地元では神童あつかいでした。ですが彼らは、東大入学後に『天才型の東大生』に出会うことになります。そして絶望的な能力(と経験)の差に心を折られ、自分が凡人であることに気がつかされます。
天才型の東大生の特徴↓
- 知能が高く、裕福な両親に育てられている
- 海外生活、さまざまな習い事などあらゆる学びの機会を与えられている
- 精神、肉体ともに健やかに発達し、高い知性と教養を身につけている
そんな天才型の東大生たちが同級生になります。凡人東大生が勝てっこありません。たとえば天才型の東大生は、次のような恐ろしい能力を発揮します↓
- 英語で教官とディスカッション
- 中国語の試験が近づいてくると、すでに中国人留学生と日常会話をしている
などなどです。
1.3. 要領型の東大生は希望の学部学科に入れない
東大では3年生から専門課程がスタートします。希望の学部・学科を選ぶわけですが、そこに入れるかどうかは2年生前期までの成績で決まります。
大学受験の時とは違い、ライバルが東大生です。東大に合格した人たちなわけです。日本一の頭脳の持ち主たちと競い合わなければなりません。この競争に敗れれば、希望の学部・学科には進学できません。
ここで痛い目を見るのが要領型の東大生です。大学受験で頻出分野を効率よく暗記してきた要領型は、基礎的な学力や教養が不足しているケースが多く、大学で行われている専門的な講義についていけません。そのため希望の学部・学科に入れず、そして目標を見失ってしまいます。
講義についていけず落ちこぼれた学生は、入学して2年もすれば東大に入ったと言う高揚感もなくなり、日々を漫然と過ごすようになる。
1.4. つきまとう東大というレッテル
天才型の東大生ならまだしも、秀才型と要領型の東大生は「東大」というレッテルに苦しむことになります。
- 就活:「東大なんだから霞ヶ関、大手企業に就職するのは当たり前だよね。」
- 就職後:「東大卒なんだからこれくらいできるでしょ。」
東大卒というブランドは強力ですが、その反面、このような悩みが長いことつきまといます。もちろんこのような悩みは東大だけでなく、学歴が高い大学だと多少なりともどこでもありますけれど。
1.5. 東大卒はどうしたら幸せになれるのか?
天才型ではない東大卒はどうしたら幸せになれるのでしょうか?著者は、東大卒が幸せになるためには3つの条件があると言います。
- 東大を出たことを忘れる(東大に苦労して入れば入るほど、その見返りを求めたくなる。けれど苦労して入ったということは所詮は凡人。凡人が東大で学べることなど、たかが知れている。)
- 環境が合わなければ速やかに脱出する(東大卒のプライドを捨てられず、合わない環境で働き続けて心身を壊してはダメ)
- 自分と他者を比べない
の3つです。どれもこれも難しい。
おわりに
「東大すげー!」という本はたくさんありますが、「東大に入学したら大変だよ」ということが書かれている本は少ないのではないでしょうか。そういう意味でとても貴重な内容が詰まっている本かと思います。
「我が子を東大へ!」と考えている普通の家庭の親御さんは、一読の価値ありだと思いますので、ぜひ手に取ってみてください。参考までに。それでは!
読書メモとして簡単に動画にしています↓↓↓
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