生徒の成績を上げるために何かできることないかなー。
そんな疑問に答えます。
結論から言うと、『生徒といい人間関係を築くこと』に尽きます。人間関係が築かれてないと、アドバイスも非難と受け止められてしまうからです。
ではどうやっていい関係を作っていくのか?
スタンフォード大学のデイヴィッド・イエーガーさん、クロード・スティールさん、キャロル・ドゥエックさんらの研究を紹介したいと思います。
このページはポール・タフさんの『私たちは子どもに何ができるのか』を参考にしています。
成績を上げる前に知っておきたい固定概念
まずは生徒の成績を上げる前に知っておきたい言葉があります。
ステレオタイプの脅威
ステレオタイプの脅威という概念があります。
「ステレオタイプの脅威」は、一般に自分の属性にとって苦手とされる場所にいる個人は、その属性に関する不安が引き金となって実力が発揮できない場合がある、とする理論だ。p112
例えば、
- 工学部で学ぶ女性は男性よりも能力が低いと感じる
- 一流大学に通うアフリア系の学生は、自分が他の人種の学生より劣っているように感じる
などです。
固定的マインドセット
固定的マインドセットとは、「能力とは持って生まれたものであって、ほとんど変化することはない」という考えを植え付けられたマインドセットのことです。
『ステレオタイプの脅威』と『固定型マインドセット』を持つ生徒と接するには注意が必要です。なぜなら、良かれと思ってする助言が、助言にならないどころか、傷つける場合があるからです。
貧困層の生徒と教師の関係は、お互いに不信感を持ったり、敵意さえあったりと、往々にして問題をはらんでいる。この問題は、教師が生徒の取り組みを批判するときに特に深刻になる。教えるという行為の中で批判は避けて通れないのだが、不利な状況に置かれてきた生徒にとってはこれが信頼の問題としてのしかかる。この教師が勉強のやり方を批判してくるのは、改善の手助けをしてくれようとしているからなのか、それともこちらに対する敬意がないからなのか?この教師は味方なのか?敵なのか?
中略
とくに、幼少期の逆境によってストレス反応システムの発達が不十分な子供たちの場合には、この疑問が差し迫った、極めて重要なものに感じられ、学校生活に多大な影響を及ぼす。p114
作文にコメントをつけた付箋をつけて返却【小さな介入】
生徒に「自分にとってのヒーローについて書くように」と指示を与えました。作文は担任によって普段通りに添削され、余白に疑問点や提案が書き込まれました。
そこから2つのグループに分けて、実験をスタートしました。どちらのグループにも、添削済みの用紙に教師の手書きの付箋紙をつけました。
- 「作文に対するフィードバックとしてコメントを書き込みました」と付箋紙に記入したグループ
- 高い期待をしていること、そして君ならこの期待に応えられると確信していると示すことを付箋紙に記入したグループ
生徒たちは添削された付箋紙付きの用紙を受け取り、成績を上げるために作文を書きなおすかどうかの権利を与えられました。
白人の場合(ステレオタイプの脅威が小さい)
ステレオタイプの脅威が小さい白人の場合(学校や担任は自分の敵ではないと思っている)、作文を書き直した生徒はごくわずかで、あまり効果はありませんでした。
黒人の場合(ステレオタイプの脅威が大きい)
ステレオタイプの脅威が大きい黒人の場合(学校や担任が敵意を持っているかもしれないと感じている)、付箋に高い期待を示すかどうかで大きく変わりました。
- ただのフィードバックの付箋グループ→書き直した生徒は17%
- 高い期待の書き込み付箋のグループ→書き直したグループは72%
と、大きく差がついたのです。
ここで重要なことは、高い期待を書いた付箋紙といっても、それはたったの一文なのです。研究者らは「付箋紙が信頼を与えた」と結論づけています。
付箋をただベタベタ貼ればいいというわけではない
学校を脅威と思っている生徒に、適切なタイミングでコミュニケーションの変化を与えることで、脅威を和らげることができると研究者らは言います。
おわりに:勉強の教え方よりも大切なものがある
学校に馴染めている生徒には勉強の方法を教えてあげるだけで成績は伸びていくでしょう。しかし、学校を脅威と感じている生徒にはそれだけではダメです。むしろ、アドバイスが非難と取られてしまうかもしれません。
そういう生徒とうまく信頼関係を築くためには、まずは付箋をつけるなどの小さな介入が有効になります。この方法が参考になれば幸いです。それでは!
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