親・教師が知っておきたい勉強する子にするための動機づけ

動機付け 親 教師 教育
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子どもに勉強をやってもらいたいのだけれど、いい方法ないかなー?どうやって動機付けをしたらいいのだろう?

そんな疑問に答えます。

 

動機付けを与える方法はとても難しいです。勉強嫌いな子にお金などでインセンティブ(動機付け)を与えてもいい効果は出ないでしょう。

結論から言うと『内発的動機付け』が必要であり、内発的動機付けには、

  1. 自律性:自分が選んでやっていると言う感覚
  2. 有能感:やればできると言う感覚
  3. 関係性:親・教師に尊重されている感覚

の3つを満たす必要があります。

 

それでは以下に具体的に書いていきます。こちらのページはポール・タフさんの『私たちは子どもに何ができるか』を参考にしています。

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ほとんどの子どもはお金でつれない

お金 モチベーション 関係

「お金というニンジンをぶら下げられたら勉強するだろう!」

そのような考え方もあります。これについて、ハーバード大学の経済学者、ローランド・フライヤーさんが行ったアメリカ史上最大にしてもっとも徹底された教育実験があるので、紹介したいと思います。

ことごとく失敗したお金による動機付け

アメリカの貧困地域の公立学校に通う生徒を対象にして実験が行われました。その実験ではあらゆる種類の報奨制度を試しました。

ハーバード大学の経済学者ローランド・フライヤーさんは、貧困地域のあるアメリカの都市の公立学校に通う生徒を対象として、あらゆる種類の報奨制度(インセンティブ)を試しました

  • PTAの会合に出席した保護者
  • 本を読んだ生徒
  • 生徒のテストの点数を上げた教師

らに報酬を支払ったのです。フライヤーさんが配った報奨金は何百万ドルにも及び、アメリカ史上最大の教育実験となりました。

 

さて、インセンディブを与えることで、生徒の成績・出席率・卒業率などをあげることができたのでしょうか?

 

その結果、

 

インセンティブ・プログラムは、ほぼ全てのケースで全く効果がなかった

 

ということが分かりました。

「実験の結果は驚くべきものだった。生徒の成績に関する金銭的なインセンティブの効果は、どの市でも統計的にゼロだった」p85

教師にお金を配ると生徒をやる気にさせる?

フライヤーさんは2007年から2010年まで、ニューヨーク市を対象に教育困難校でインセンティブとして教師に7500万ドルにのぼる現金を配布するプログラムを行い、評価しました。

その結果・・・

 

教師にインセンティブを与えても生徒の成績は良くならない

 

ということが分かりました・・・。

「教師へのインセンティブが生徒の成績、出席率、卒業率を上げると信じるに足りる証拠は全く見つからなかった。報奨のおかげで生徒や教師の行動が変わることもなかった。反対に、特にマンモス校では、教師に対するインセンティブが生徒の成績を下げたことはあった」p84

インセンティブを与えることはとても難しいのです。

もともと成績がいい子は少しだけ改善かみられた

ヒューストンの実験では、もともと成績が良い子どもには、インセンティブを与えることで、テストの得点がほんの少しだけ改善が見られることもありました。他の実験でも、もともとモチベーションが高い子にはインセンティブが少し効果があることが分かっています。

インセンティブの結論→勉強しない子には効果がない

インセンティブの効果をまとめます。

  • 教師に現金報酬→効果なし。生徒や教師の行動も変わらない。なんなら生徒の成績を下げることもある。
  • 生徒に現金報酬→効果なし(もともと成績が良い子やモチベーションが高い子には少し効果がある)
  • 親に現金の報酬→効果なし。

 

つまり、インセンティブを与えることで、生徒や教師や親のモチベーションをあげることはすごく難しいということです。

なぜインセンティブでは勉強への動機付けが起こらないのか?

インセンティブ うまくいかない

なぜインセンティブ設計がうまくいかないのでしょうか?

そもそもの話ですが、困難な環境で育った子供たちは、“良い教育を受けれる”だけでインセンティブが発生します。なぜかと言うと、高校卒業した人は高校卒業しない人より、

  • 収入面
  • 家庭面
  • 健康面
  • 犯罪面

などで、メリットがあるからです。これは大学卒業者とそうでない人でも同じことです。

 

子供たちは当然ながらこのことを知っています。それなのに、お金というさらなるインセンティブが与えられようとも成績を上げようとしないのです。

心理学者が明らかにしたインセンティブの問題

インセンティブがなぜうまくいかないのかの疑問をフローにすると下のようになります。

  1. 貧困地域の子どもは、勉強し、高校や大学を卒業することが人生をより良くすると分かっている
  2. それなのに勉強ができる環境を与えられても勉強をしない
  3. なんなら、お金という報酬を与えられても勉強をしない
  4. なぜなんだ?

という矛盾を教育界は抱えることになりました。この考え方の背後にあるのは「人って報酬をもらえるから良いことをするし、罰があるから悪いことをしないよね」という短絡的な思考があります。こういう考え方をする人たちを、行動主義者と呼びます。

 

行動主義者の考えに異を唱えたのが、ロチェスター大学の二人の心理学者、

  • エドワード・デシさん
  • リチャード・ライアンさん

になります。デシさんとライアンさんはこのように言います。

私たちは多くの場合、自分の行動が生む表面的な結果ではなく、その行動によってもたらされる内面的な楽しみや意義を動機として決断を下す。p88

2人はこの現象を「内発的動機づけ」と名付けました。

内発的動機づけとは?

重要なことですので、内発的動機づけが出てくるまでの流れをもう一度言葉を変えて説明します。

 

1970年代の心理学では、行動主義(人は褒美と罰に反応)するという考えが主流でした。つまり、「褒美を与えれば人は行動するでしょ」という考えです。

 

これに対して、エドワード・デシさんとリチャード・ライアンさんは、外的な報酬ではなく、「行動することによって得られる、内面的な楽しみや意義を動機として、人は決断を下す」と考え、これを『内発的動機づけ』と名付けました。

 

つまり、「内面から湧き上がってくる感情で人は行動しますよ」ということです。

内発的動機づけを起こさせる3つの鍵

なら、内発的動機づけを起こすためには何が必要なのでしょうか?2人は次の3つを満たし続ける必要があると言います。

  • 有能感(私ってできるやつなんやで!)
  • 自律性(自分でコントロールする)
  • 関係性(人との関係性)

この3つが満たされているときに限り、人は内発的動機づけを維持できるということです。

デシとライアンは数十年をかけて複数の実験を行い、外的な報酬、フライヤーの研究で中心となった物質的なインセンティブは、長期にわたるプロジェクトへの動機づけとしては効果がなく、多くの場合、むしろ逆効果でさえあることを示した。p88

パズルの研究から分かること

デシさんの有名な研究を紹介します。

学生を2つのグループに分け、キューブ型のパズルを組み立てるように頼みました。一方のグループには無報酬で、もう一方のグループにはパズルを組み立てるごとに報酬を支払います。

 グループ1グループ2
1日目報酬なし報酬なし
2日目報酬なしパズルを完成させるごとに
1ドルを支払うことを申し出る
3日目報酬なし資金が底をついたからと説明し、
パズルを完成させても報酬は出ないと告げる

その結果、

  • グループ1:一度も報酬を受け取らなかったグループは、だんだんパズルに夢中になっていき、日を追うごとにパズルを完成させるまでの時間を短縮させていった。学生たちは休憩時間もパズルを続けていた。
  • グループ2:報酬を受け取るグループは、2日目は報酬のためにパズルを早く完成させた。しかし、3日目は、デシがちょっと席をはずすとパズルに見向きもしなくなった。→報酬をもらうことで、ワクワクするパズル遊びは仕事になってしまった。仕事になった以上、報酬がないのにやるわけがない。

 

行動経済学の研究からでも分かっていますが、社員のモチベーションを上げるのは給料アップではありません。『お金』というものは魅力がありますが、それだけで人のモチベーションを上げることはできないのです。

幼稚園児のインセンティブとモチベーションの研究

スタンフォード大学の心理学者、マーク・レッパーさんが幼稚園児に向けて実験を行いました。

お絵描き好きの幼稚園児のグループに、絵を描いたらご褒美として青いリボンと賞状をあげました。その結果・・・2週間後、園児たちは絵を描くことへの興味を失っていて、自由時間にお絵描きをすることが減っていたのです。

 

報酬をもらうことで、「絵が好きだから描いているのか、それとも報酬をもらうために絵を描いているのか」が分からなくなってしまうのです。こういうのを認知的不協和と言ったりします。

 

報酬は、自分の内側から出る、内発的動機づけを阻害する可能性があるということです。

教師ができる子どもの内発的動機づけを促進させる方法

内発的動機づけを維持させるには3つの鍵がありました。

  1. 自律性
  2. 有能感
  3. 関係性

の3つです。

ではどうやったらこの3つの鍵を育むための環境を作り出せるでしょうか?デシとライアンさんはこう言います。

自律性を育むために

生徒が自律性を実感するには、

  1. 生徒が自分で選んで
  2. 自分の意思でやっている

という実感を教師が最大限に持たせる必要があります。管理・強制されているという感覚を与えてしまうと、自律性は育めません。

有能感を育むために

生徒が有能感を実感するためには、

  • 生徒の能力をほんのちょっと超える課題
  • 難しいけれど成し遂げることができる課題

を教師が与えたときです。

関係性を育むために

生徒が関係性を感じるためには、

  • 教師に好感を持たれ
  • 価値を認められ
  • 尊重されている

ときに、関係性を感じることができます。

 

生徒のモチベーションを高めたいのであれば、この3つの感覚を強化することが大切になります。

そしてひとたび生徒の心が離れ、やる気が失われると、どんなに物質的なインセンティブや、反対に罰を与えても、動機づけにはなんの効果もない。少なくとも深く響く効果、長期にわたる効果は得られない。p92

本当に優秀な先生とは、教科の教え方がうまいというよりは、生徒との関係性を築ける先生なのかもしれません。

外発的動機づけが必要な時

内発的動機づけも必要ですが、外発的動機づけも必要だとデシとライアンは言います。内発的動機づけさえできてれば、人はモチベーションを保てるかというと、それはなかなか難しいです。

 

なぜなら、反復練習は飽きてしまうからです。

 

「何かを学び、何かについて詳しくなる」ためには、必ず反復練習が必要になります。反復練習は退屈なものですので、それを乗り越えるために外発的動機づけが重要になってきます。

デシとライアンによれば、こうした外発的動機づけを自分のうちに取り込むようにうまく仕向けられた子供は、モチベーションを徐々に強化していけるという。ここで心理学者は、人が求める三つの項目に立ち戻る。「自律性」「有能感」「関係性」である。この三つを促進する環境を教師が作りだせれば、生徒のモチベーションはグッと上がるというわけだ。p91

 

にんじんをぶら下げる時も必要だということです。

おわりに:教師に新しい指標を

ノースウエスタン大学の経済学者キラボ・ジャクソンさんは、ノースカロライナ州の2005年から2011年のあいだのすべての9年生、46万4502人を追跡したデータから4つの数字を非認知能力を示す代替尺度にしました。4つの数字は、

  1. 出席日数
  2. 停学回数
  3. 留年の有無
  4. GPA

になります。この指標は大まかではありますが、学校への積極的な関与具合を示しています。

 

そしてこのジャクソンさんが用いたデータの方が、テストの得点よりも、

  • 生徒が大学へ行けるかどうか
  • 大人になった時の収入
  • 将来、逮捕されるかどうか

を、より的確に予測することができました。

 

そしてジャクソンさんは、テストの得点よりも、この4つの指標(非認知能力)を伸ばすことができる教師が一定数いることを発見しました。この能力を伸ばせる教師が担任になると、

  • 出席率
  • 停学処分を避ける可能性
  • 進級できる可能性
  • GPAの点数

をあげることができるのです。しかも、その教師が担任をしている間だけではなく、クラスが変わってからも有効だというのです。

 

しかし、非認知能力を伸ばす教師は、現行の教師評価(テストの点数を伸ばせたかどうか)の尺度では評価されません。評価されないどころか、誰1人(ジャクソンさん以外)気がついていないのです。

 

ジャクソンさんの計算によると、テストの点数をあげることで名高い教師たちよりも、高確率で生徒を大学に送り込み、生徒の将来の収入を引き上げているのにです。

ジャクソンの研究からはっきり分かるのは、生徒の成功に大きく貢献していながら、現行の成績責任の尺度では評価されない教師がいると言いうことだ。このような尺度は、教師の行動をゆがめてしまうかもしれない。そしてそれは生徒の利益にならない。もしあなたが生徒の非認知能力を伸ばすことを得意とする教師だった場合、テストの得点を伸ばすことを得意とする別の教師がボーナスをすべてさらっていくのを見たら、自分の教え方を変えようとするかもしれない。今のあなたのやり方が生徒に大きな利益を与えているかもしれないのに。p99

つまり、教師の評価尺度に『非認知能力を伸ばせるか?』という項目を加える必要があるとのことです。

 

と言っても、行政はなかなか変わりません。生徒の非認知能力を伸ばせている教師の皆さんは自信を持ってください。あなたは正しいです。それでは!

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