ポジティブ心理学で有名なマーティン・セリグマンさんの『ポジティブ心理学の挑戦 “幸福”から“持続的幸福”へ』を読みました。教育に生かせそうな箇所がありましたので、このページにて書いていきたいと思います。
ポジティブ心理学を教育に生かす
著者は『ウェルビーイング理論』という概念を提示しています。ウェルビーイングリオンでは以下の5つの要素からなります。
- ポジティブ感情
- エンゲージメント
- 意味・意義
- ポジティブな関係性
- 達成
この5要素を高めることで『持続的幸福度』を最大化することが著者は言います。
1:ウェルビーイングを教育に生かした方がいい理由
なぜウェルビーイングを教育に取り入れた方がいいかと言いますと、
- 世界中で若者の抑うつが増えているから
- ウェルビーイング度が高いと学習力が増進するから
です。
2:ウェルビーイングのエビデンス
筆者らの研究チームは、ウェルビーイングの効果を確かめるべく2つのプログラムを学校で検証しました。
- PRP(ペンシルベニア大学・レジリエンシー・プログラム)
- ストラス・ヘイヴン・ポジティブ心理学カリキュラム
PRPは世界でもっとも広く研究されている抑うつ防止プログラムです。PRPの研究結果は以下の通り↓
- メタ分析で、PRPは抑うつ症状を軽減させ、予防することが分かっている。
- メタ分析で、PRPは絶望感を軽減させることが分かっている。
- PRPは臨床レベルの抑うつと不安障害を予防する。
- PRPは不安感を軽減させ予防する。
- PRPは行動障害を軽減する。
- PRPは異なる人種間・民族的背景を持つ子供にも同様の効果がある。
- PRPは健康に関連した行動を改善する。
PRPは効果があることが分かっています。しかしこれはレジリエンスというポジティブ心理学における1つの側面に効果があるにすぎません。
そこで筆者らの研究チームは、ポジティブ感情を引き上げ、ネガティブ感情を軽減させると同時に、キャラクター・ストレングス、関係性、意味・意義を構築するための包括的なカリキュラムを作成しました。それがストラス・ヘイヴン・ポジティブ心理学カリキュラムです。
フィラデルフィア市郊外にあるストラス・ヘイブン・ハイスクールで347人の9年生(日本でいう中学3年生の生徒)を対象に、国語科の授業でランダム化比較試験を行いました。
- クラスの半分の生徒にポジティブ心理学のカリキュラムを導入
- 残りの半分には何もしない
カリキュラムは1年間かけておこなわれ、20以上の80分のセッションからなります。
内容は、
- 強み
- ポジティブ心理学の考え方やスキルについての議論
- 毎週のクラス内での活動
- 生徒が生活の中でスキルを応用するための宿題
- 日記による反省
などがあります。
具体的なエクササイズを2つ紹介します。
1:3つのよいことエクササイズ
生徒に、1週間の間、3つのよい出来事を毎日書き留めるように指示します。それぞれのよい出来事の横に、次のうち1つを書き添えます。
- 「このよい出来事はなぜ起きたのだろうか?」
- 「この出来事は自分にとって何を意味するだろうか?」
- 「将来、どうすればこのようなよい出来事をもっと経験することができるのだろうか?」
2:特徴的強みを新しい方法で活用してみる
『VIA・強みテスト』を受けて、その翌週には学校で、自分の最高の強み(テスト結果の1位)を新しい方法で活用します。
✅調査の結果
カリキュラムを受けた生徒は、
- 好奇心
- 向学心
- 創造性
といった強みが向上しました。
また、
- 学校における楽しみ
- エンゲージメントの度合い
- 国語の成績と書く能力
が向上しました。
さらに、
- 共感力
- 協調性
- アサーティブネス(相手も尊重した上で、誠実に、率直に、対等に、自分の要望や意見を相手に伝えるコミュニケーション力)
- 自己コントロール能力
といった社会的スキルも向上しました。
これらの結果から、著者はウェルビーイングは教えるべきである、と結論を出しています。ということで、今はウェルビーイングを普及させようとしているらしいです。
おわりに
ウェルビーイングの本格的なカリキュラムは専門家から学ぶしかありませんが、
- 3つのよいことエクササイズ
- 特徴的強みを新しい方法で活用してみる
の2つはすぐにでも始めることができます。
強み診断はこちらか無料で受けられます。
スクロールすると『強みに関する調査票 (VIA)』という項目があるので、右側のTake Testをクリック(タップ)でスタートです。(240問ほどあるので15分ほどかかります)
ぜひぜひ、ポジティブ心理学者が開発したテクニックを使って教育の参考にしてみてください。それでは!
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