『米国最強経済学者にして2児の母が読み解く子どもの育て方ベスト』という本を読んだのでメモ。
とてもいい本でした。現段階で科学的に分かっている『子育てってどうすれば?』についてかなり網羅的に書かれておりましてので、お父さんお母さんはとても勉強になる一冊かと。
ただ、「こうするべき!こっちの方がいい!」みたいに断定されているところはほとんどないので、そーゆーのを求めている方には向かない本です。
でもね、断定しないところがいいんですよね。そこが正直でいいんです。「この辺りは科学的にデータが集まっているけれど、この辺りは集まってないから分からんわ」ってな感じのところが好感を持てます。(ちなみに断定口調で書かれている本は、だいたい怪しいのでお気をつけを)
米国最強経済学者にして2児の母が読み解く子どもの育て方ベスト【読書メモ】
この本の何がすごいって、子育てに関するあらゆることが科学的にカバーされているところです。(「あらゆる」は言い過ぎたけれど、それくらいにカバーされている範囲が多いです!)
この本の目次を見て、気になるところから読むのがオススメです↓
- 1章 最初の3日間 母子同室は思ったほど「メリット」がない
- 2章 自宅へ 新生児は「泣き止まない」の?
- 3章 産後のママ 「産む前」とこんなに変わる
- 4章 「母乳育児」神話 母乳で「賢さ」は決まらない
- 5章 母乳で育てるハウツー 最もいいあげ方は?
- 6章 赤ちゃんを寝かせる どこで、どんな姿勢がいい?
- 7章 赤ちゃんのスケジュール 彼らに「リズム」はある?
- 8章 「予防接種」は必ず受けて! リスクは無視していいレベル
- 9章 「家」にいる? 「仕事」に行く? 専業主婦か仕事復帰か
- 10章 お世話は誰がする? 「親以外」が保育することのデータ
- 11章 寝かしつける 最高の「ねんねトレーニング」は?
- 12章 「おっぱい」を卒業する 「離乳食」へのスムーズなシフト
- 13章 歩きはじめの早い遅い 「うちの子の成長は平均?」
- 14章 ベイビーアインシュタインvsテレビの視聴 「知育教材」は本当に効果がある?
- 15章 言葉の早い遅い いつからしゃべるのが普通?
- 16章 トイレトレーニング 「ごほうび」はシールorM&M’Sのチョコ?
- 17章 しつける 「悪いことをした」「ぐずった」ときのベストな対応
- 18章 幼児教育 するとしないで全然違う
- 19章 最良の「夫婦関係」 よき「パートナー」でいつづけるには?
- 20章 次の子ども いつ産むのがベスト?
- 21章 最高の「子育てアドバイス」を選ぶとしたら? 母として、経済学者として
多くの方が関心があるであろう幼児教育なんて18章に書かれています。
この本を読んで決めるのはあなた
冒頭にも書きましたが、この本では「子育てはこうするべきだ!」みたいなことは教えてくれません。
統計から導かれることを私たちに教えてくれます。たとえば↓
- 〜とは言い切れない
- 〜の可能性が高い
- 〜の可能性が低い
- AとBを比べるとAが少し上回る
などです。
これらの情報をもとに「自分で決定してね!」というのが、この本のスタイルです。
本書では、あなたが子供のために何を決定すべきかを教えるのではなく、必要なデータと意思決定の仕組みを提供したいと思う。データはみんなにとって同じだが、決定はあなただけのものだ。
p22
「なんだよ!そんなんじゃ本を読む意味がないじゃん!」と感じられる方は、どうぞ怪しげなセミナーなどに通ってくださいませ。彼らはきっと「こうするべき!」と、科学的根拠もない自分だけの経験をもとに、もしくは自分に都合の論文だけを引っ張ってきてお話ししてくれるはずです。
母乳育児はエビデンスが多いが、完璧ではない
科学的根拠でバシッと決めてほしいですよね。
でも決まらないんです。
なぜかというと、「完璧な研究が存在しないから」です。だって、すべてのデータを正確に集めることなんてできませんから。またデータを集められたとしても…という問題もあります。
エビデンスの多い母乳育児で考えてみましょう。
「母乳育児をすると、賢い子が育つ!」みたいなことが言われています。
じゃあそれが本当なのかというと、アメリカなどほとんどの先進国では、学歴が高く、裕福な女性ほど母乳育児をするという傾向があったりします。ですから母乳育児のおかげで子どもが賢いのか、そもそも賢い親の子どもだから賢いだけなのかが、分かりづらいんですよね。
つまり、母乳育児と子どもの学力向上には因果関係は見られないのです。
また、母乳育児は赤ちゃんの健康面にとって短期的なメリットはあれど、長期で考えると健康面のメリットに関するエビデンスもありません。
母乳育児は母親の健康にメリットがある
母乳育児が子どもに与えるメリットは、因果関係は見られません。
ただ、なんと母乳育児が母親自身にメリットが与えることが分かっています。
母乳育児をすると、乳がんのリスクが20〜30%減少するのです!
20〜30%はかなり大きいです。
と言っても、やはりこのデータも完璧ではありません。その部分の説明を引用すると↓
このデータは完璧ではない(母親の社会経済的状況の調整がほぼない)。だが、因果関係の主張は、生物学的メカニズムで補強されている。授乳で乳房の細胞に変化が生じ、発がん物質の影響を受けにくくなる。さらに授乳でエストロゲンの生成が低下し、その結果乳がんリスクが低下するのだ。
p171
授乳でエストロゲンの生成が低下し、それが乳がんのリスクを低下させると。なるほどですね。
体罰はもちろんマイナス
「体罰はダメ!子どもにマイナスの影響を与える!」ということが、徐々に浸透してきています。
では、著者は体罰についてどう考えているのでしょうか?
「体罰は、短期でも長期でも、マイナスの影響を及ぼすことが分かっている」
とのことでした。ハイ、体罰はダメ絶対です!
母として経済学者としてできるアドバイスとは?
本書の最後で、著者が母として経済学者としてできる「最高のアドバイスとは?」が書かれていましたので、それを箇条書きしますと↓
- 子育てにおいてすべての可能性を考えることはできないので、なりゆきに任せることも必要
- 自分はできるだけのことをしている、最善を尽くしていると信じることが必要な場面も多々ある
- あれこれと心配するよりも、子どもと一緒に楽しく過ごすことが重要
- 有効な場合にはデータを使うこと、家族にあった決定をすること
- そして時には考えないようにすること
でしたー!
こーゆー系の本を読まれる方は、たぶん子育てをとても心配しているのだと思います。それはそれでいいのですが、全部をちゃんとやろうと思うとやっぱり疲れちゃいますよね。
ですから、たまにはあれこれと悩むのをやめて、『子どもと一緒にただ純粋に楽しむ』っていうアドバイスに従ってみるのもいいんじゃないでしょうか。
参考までに。それでは!
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