子どもの褒め方はどう考えるべきか。頭の良さより、やり方と粘りを言葉にしたい

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この記事で言いたいことは、一つだけです

子どもを褒めるなら、才能そのものより、その子が自分で動かした部分を言葉にしたほうがいい。

工夫したこと、やり方を変えたこと、あきらめなかったこと、見直したこと、前よりよくなったこと。そこを丁寧に拾っていくほうが、少なくとも「頭がいいね」「天才だね」を連発するより、ずっと安全です。

以下、この一点を軸に、研究の知見、元塾講師としての実感、そして具体的な声かけの例を順に書いていきます。


「褒めること自体が大事」と思っていた頃の話

教室の机で問題を前に鉛筆を置いて考え込んでいる小学生の男の子のフラットデザインイラスト

私は元塾講師です。教室には、点数が伸びた子も、思うようにいかない子もいました。

当時の私は、「褒めること自体がとにかく大事なのだろう」とかなり素朴に考えていました。できたら褒める。頑張っていたら褒める。元気がなさそうなら、とりあえず何かいいところを見つけて褒める。それで子どもの顔が明るくなれば、よい声かけができたのだろう、と。

でも、あるとき引っかかる出来事がありました。

算数がよくできる小学5年生の男の子がいて、私はよく「頭いいなあ」と言っていました。本人もまんざらではなさそうでした。ところが、ある日、初めて見るタイプの文章題を出したとき、その子は30秒ほど問題を見つめたあと、「これ習ってないからできない」と言って鉛筆を置きました。

習っていないからできない。その言葉が気になりました。

この子は、自分が「頭がいい子」だと思っている。でもそのぶん、解けない問題が出てきたとき、「頭がいいはずの自分が解けない」という状況に耐えられなかったのかもしれない。考えてわからなかったら、「頭がいい」の看板が傷つく。だったら最初から手を出さないほうがいい。そういう力学が、無意識に働いていたように見えました。

このときから、私は「褒め方」というものを少しまじめに考えるようになりました。


研究は何を言っているのか

虫眼鏡やグラフなど研究・調査をイメージするアイコンが並んだフラットデザインイラスト

褒め方の研究でいちばん有名なのは、MuellerとDweckが1998年に発表した論文です。これは単発の実験ではなく、6つの研究をまとめたもので、子どもの褒められ方とその後の行動を丁寧に追っています。

やったことを簡単に言うと、こうです。

子どもたちにパズルを解かせて、うまくできたあとに声をかける。片方のグループには「頭がいいね」と能力を褒め、もう片方には「よく頑張ったね」と努力を褒める。そのあと、難しい問題で一度失敗させて、そこからどう反応するかを見る。

結果、能力を褒められたグループは、失敗後に粘り強さが下がり、課題を楽しめなくなり、自分の力を低く見積もりやすくなりました。一方、努力を褒められたグループは、失敗のあとも学ぶ姿勢を保ちやすかった

この研究は非常に大きな影響を与えました。「褒めるなら才能より努力を」という考え方の土台になった研究です。

ただし、ここから先が大事です。

その後の追試では、話がそこまできれいには再現されていません。

  • LiとBates(2019年) の研究では、1つ目の実験は1998年の結果をかなり近い形で再現しましたが、2つ目と3つ目では同じような効果は確認できませんでした。
  • Bennett-Pierreら(2024年) の事前登録研究でも、7歳から8歳の子どもを対象にしたオンライン課題で、能力を褒めた場合とプロセスを褒めた場合の間に、粘り強さや自己評価の明確な差は出ませんでした。

つまり、「能力を褒めると必ず悪い結果になる」とも、「努力を褒めれば必ず良い結果になる」とも、今の段階では言い切れません。効果は条件によって変わるし、その大きさも控えめに見たほうがよさそうです。

私がこの記事で「努力を褒めれば子どもが劇的に変わる」と書かないのは、このためです。

ただし、研究が割れているからといって、褒め方を何も気にしなくていいという話にはなりません。過程を褒めるほうが安全だという方向性を支持する研究は複数あり、実践上はこちらのほうが無難だと考えられます。効果の大きさや安定性に議論はあっても、少なくとも私が把握している範囲では、過程を褒めたほうが能力を褒めるより悪い結果になったという強い証拠は見当たりません。

だから私は、こう整理しています。

「過程を褒めれば万事うまくいく」は言いすぎ。でも「才能のラベル貼りより、子どもが自分で動かした部分を具体的に認めるほうが、少なくとも無難で、子どもを余計に追い詰めにくい」。これが今のところ、いちばん正直な言い方です。


「頭がいいね」が重荷になるメカニズム

能力のラベルが重荷になっている様子を表現した子どものフラットデザインイラスト

研究の話だけだと抽象的になるので、なぜ「頭がいいね」が子どもにとって重荷になりうるのかを、もう少し噛み砕いて説明します。

「頭がいいね」と言われた子どもは、うれしいと感じます。これは当たり前です。でも同時に、あることを学びます。「自分は頭がいいと思われている。その評価が、今の自分の価値を支えている」。

すると、次にどうなるか。

難しい課題が出てきたとき、「挑戦して失敗したら、頭がいいという評価が崩れる」と感じやすくなります。だったら最初から手を出さないほうが安全です。あるいは、失敗したときに、「やり方がまずかった」ではなく「自分の頭が足りなかった」と受け取りやすくなります。やり方の問題なら次に修正できますが、頭の問題だと感じたら、修正のしようがありません。そこで気持ちが止まってしまう。

これが、1998年の研究で観察されたことの中身です。そして、私が塾で見たあの男の子の「習ってないからできない」も、おそらくこれと同じ構造でした。

親の側には、もちろん悪気はありません。子どもの良さを認めたくて言っている。でも子どもの側では、「認められた良さを守らなければならない」というプレッシャーに変換されることがある。

ここが、褒め方のいちばん厄介なところです。


では、どこを褒めるのか

子どもの目線に合わせてしゃがみ、穏やかに声をかけている親のフラットデザインイラスト

先ほど書いた通り、「努力を褒めれば全部解決する」とまでは言えません。

でも、方向としてはこうです。

褒める対象を、「その子がどういう人間か」から、「その子が何をしたか」に移す。

具体的には、以下のような部分です。

  • やり方を工夫したこと
  • 途中でやり方を変えたこと
  • あきらめずに続けたこと
  • 自分で見直したこと
  • 前の自分と比べてよくなったこと
  • 必要なときに助けを求めたこと

これらはすべて、「子ども自身がコントロールできる行動」です。才能や頭の良さは、本人の意思では変えられません。でも、工夫するかどうか、見直すかどうか、続けるかどうかは、自分で選べます。

褒め言葉が「自分で選べる部分」に向いていると、子どもは「次もそうしよう」と思いやすい。反対に、「自分では変えられない部分」に向いていると、子どもは「それを持っていなかったらどうしよう」と不安を抱えやすい。

この違いは、2002年のHenderlongとLepperによるレビュー論文でも整理されています。褒め言葉が動機づけの助けになるのは、子どもに「自分で動かせる原因」に注意を向けさせ、自律性や有能感を損なわず、他者との比較を煽らず、現実的な期待を伝えるときだ、と。

逆に言えば、これらの条件を外した褒め方は、たとえ善意であっても機能しにくいということです。


大げさに褒めることの落とし穴

褒め方で見落とされがちなのが、「言葉のボリューム」の問題です。

「すごい」「完璧」「天才」「信じられないくらい上手」。

親が子どものことを本気でうれしく思っているとき、言葉がつい大きくなるのは自然なことです。でも、この「大げさな褒め方」が、子どもによっては逆効果になることがわかっています。

Brummelmanらの2014年の研究では、自己評価の低い子どもほど、大げさな褒め言葉のあとに難しい課題を避けやすくなることが示されました。さらに2017年の縦断研究では、親による大げさな賞賛が、その後の子どもの自尊心の低下や、一部ではナルシシズムの上昇と結びついていたという報告もあります。

なぜこうなるかを考えてみると、大げさな褒め言葉は子どもにとって二つの意味を持ちうるからです。

一つは「自分は本当にすごいんだ」という高揚。もう一つは「次もこの水準を出さないと、がっかりされる」という恐怖です。自信のある子は前者で処理できても、自信のない子は後者が先に来やすい。

ここに皮肉があります。親は、自信のない子にこそ大きな言葉をかけてあげたくなる。でも、大きな言葉がいちばん重荷になりやすいのも、自信のない子なのです。

私は塾で、点数が跳ね上がった生徒に対して「すごいじゃん!」と大きなリアクションをしたことが何度もあります。でも振り返ると、そのあとの子どもの表情が、喜びというより戸惑いに近かったことがありました。「そこまで言われるほどのことかな」という顔です。

あのとき私がすべきだったのは、テンションを上げることではなく、何がよかったのかを静かに具体的に言ってあげることだったと思います。


「たくさん褒めて自尊心を上げれば伸びる」は本当か

少し話を広げます。

「子どもの自尊心を高めれば、学力も人間関係もよくなる」という考え方は、長い間広く信じられてきました。でも研究を見ると、この話もそこまで単純ではありません。

2003年にBaumeisterらが発表した大規模なレビューでは、自尊心と学校成績の間に相関はあるものの、「自尊心を上げたから成績が上がった」とまでは言えないと結論づけられました。むしろ、成績がよかったことが自尊心を押し上げている面もある、という整理です。

その後、2022年にOrthとRobinsが発表した更新レビューでは、高い自尊心には学校、仕事、人間関係、メンタルヘルスなどの面で前向きな効果があるとまとめられています。ただし、その効果の平均的な大きさは控えめなものでした。

つまり、自尊心は無意味ではない。でも、自尊心さえ上げれば全部うまくいくという魔法でもない

この話を褒め方に引きつけると、こうなります。

褒める目的を「子どもの気分をよくすること」だけに置いてしまうと、自尊心のインフレが起きやすい。褒められることに慣れて、褒められないと不安になる。あるいは、実力以上の自己像を持ってしまい、現実との落差でかえって傷つく。

私が考える褒め言葉の本当の役割は、もう少し地味なものです。

子どもが失敗したときに、自分のすべてを否定しないで済むようにすること。「今回はうまくいかなかったけど、自分のやり方を変えれば次は違うかもしれない」と思える回路を、日々の声かけの中で少しずつ育てること

それは劇的なものではありません。でも、長い目で見たときに、子どもの立ち直り方を左右するのは、こういう地味な積み重ねだと思っています。


先に「避けたい言い方」と「言い換え」を整理します

避けたい声かけと推奨する声かけの対比を表す吹き出しのフラットデザインイラスト

ここまでの話をふまえて、代表的な褒め言葉の言い換えを一覧にしておきます。

なるべく避けたい言い方言い換えるならこちら
頭がいいねよく考えていたね
天才だね自分でやり方を見つけたね
100点すごいね毎日続けていたのが出たね
さすが、センスあるね前よりだいぶ安定してきたね
〇〇ちゃんより上手だねこの前の自分よりよくなったね
絶対できるよどこまでできていて、どこで止まったか一緒に見よう
すごい、完璧ここが特によかったよ

左側の言い方が「絶対にダメ」という意味ではありません。たまに口をついて出るのは普通のことです。ただ、それが声かけの中心になり続けると、先ほど書いたような構造が生まれやすくなる。だから、右側の方向に少しずつ寄せていく意識があるといい、というくらいの話です。


迷ったときの型:事実、よさ、次の一歩

具体的な場面別の例に入る前に、一つだけ「型」を用意しておきます。どう褒めたらいいかわからなくなったとき、この型に当てはめると、声かけの方向が定まりやすくなります。

まず、見た事実を言う。
次に、それのどこがよかったかを言う。
最後に、次につながる一言を添える。

たとえば。

「さっき、わからない問題をすぐ飛ばさずに止まって考えてたね。あれ、大事だと思う。次は、どこで止まったかだけメモしておくと、あとで振り返りやすいかも」

三つ目の「次の一歩」は、毎回言う必要はありません。場面によっては、事実とよさだけで十分です。子どもが疲れているときに「次はこうしたら」まで言うと、うるさく感じることもあります。

大事なのは最初の「事実を言う」の部分です。ここが具体的であればあるほど、そのあとの言葉に重みが出ます。逆に、ここが曖昧だと、何を言っても「適当に褒めてるだけ」に聞こえます。

もう一つ例を出します。

「今日、弟とおもちゃの取り合いになったとき、手を出さずに言葉で言おうとしてたね。あれ、けっこうすごいことだよ」

事実は「手を出さずに言葉で言おうとしていた」。よさは「けっこうすごいこと」。この場合、次の一歩は不要です。子どもが自分で感情をコントロールしようとした事実を認めるだけで、十分な声かけになっています。

このあとの場面別の例も、基本的にはこの「事実+よさ(+次の一歩)」の構造で書かれています。型を意識しながら読んでみてください。


具体的にどう声をかけるか:場面別の例

ここからは、実際の場面ごとに、どんな言い方ができるかを書いていきます。

あくまで「この方向で」という参考例です。一字一句このとおりに言う必要はありません。お子さんの年齢や性格、そのときの空気に合わせて、自分の言葉に直してください。

勉強しているとき

「最後に自分で見直していたね。あれ、地味に大事だよ」

「わからないところを飛ばさずに止まって考えていたね」

「さっきのやり方だと引っかかるって気づいて、途中で変えたでしょう。あれがよかった」

「前より、問題文を読む時間が長くなってる。それだけちゃんと読もうとしてるってことだよね」

ポイントは、勉強の出来栄えではなく、勉強の仕方を見ていると伝えることです。「何を解いたか」より「どう解こうとしていたか」に目を向ける。

テストでいい点を取ったとき

「点数もよかったけど、毎日やってたのがちゃんと出たね」

「今回は、苦手な単元から逃げなかったのがよかったと思う」

「この前ここでつまずいてたのに、今回は自力で解けてる。変わったね」

点数を一緒に喜ぶこと自体は全く問題ありません。ただ、喜んだあとに、「なぜこの点が取れたのか」の部分に一言触れてあげると、子どもの中に「点数は自分の行動の結果なんだ」という感覚が育ちやすくなります。

うまくいかなかったとき

ここが、実は親にとっていちばん難しい場面です。

子どもが落ち込んでいるとき、泣いているとき、怒って投げ出しそうなとき。つい「大丈夫だよ」「気にしないで」「次はできるよ」と言いたくなります。その気持ちはよくわかります。

でも私の経験では、「大丈夫」は子どもにあまり届きません。なぜなら、本人にとっては全然大丈夫ではないからです。「気にしないで」も同様です。気にしているからつらいのに、「気にするな」と言われると、つらいと感じている自分自身を否定されたように感じることがあります。

では何を言えばいいのか。

まず、沈黙でいい時間があります。子どもが泣いているときや怒っているときは、すぐに言葉をかけるより、隣にいるだけのほうがいいことがあります。

少し落ち着いてから言うなら、たとえばこういう方向です。

「難しかったね。でも最後まで答案は埋めようとしてたね」

「今日はきつかったな。でもどこで詰まったかは、ちょっと見えたんじゃない?」

「悔しいよね。ちゃんとやってたの知ってるから、私も悔しい」

「落ち着いたら、どこで引っかかったか一緒に見てみよう。今日じゃなくてもいいよ」

ここでのポイントは、子どものつらさをまず認めることです。そのうえで、「全部がダメだったわけじゃないよ」というメッセージを、具体的な観察で伝える。

私が塾で気づいたのは、失敗した直後に子どもがいちばん聞きたいのは「アドバイス」ではない、ということでした。聞きたいのは「この人は、自分がダメだったことだけじゃなく、やろうとしていたことも見てくれている」という確認です。それが伝わってから初めて、「じゃあ次はどうする?」という話ができるようになる。

順番を間違えると、こちらがいくら正しいことを言っても入っていきません。

日常生活で

褒めるのは勉強だけではありません。むしろ、生活の中の小さな場面のほうが、回数も多いし、子どもの反応も素直に出やすいです。

「自分から靴をそろえたね」

「言われる前に片づけ始めてたの、見てたよ」

「さっき怒りそうだったのに、一回止まれたね。あれすごいと思った」

「弟にそれ貸してあげたんだ。弟、うれしそうだったよ」

「今日の朝、自分で起きたね。目覚まし止めてから二度寝しなかったでしょう」

こういう声かけは、一回一回は些細です。でも、積み重なると、「この人は自分のことを見てくれている」という信頼になります。この信頼があると、勉強や進路の話でこちらの言葉が届きやすくなる。逆にこの信頼がないと、どんなに正しいアドバイスをしても、「どうせわかってないくせに」で弾かれます。


他人と比べないほうがいい理由

「クラスで一番だったね」「〇〇ちゃんよりできたね」という褒め方は、その瞬間は効きます。子どもにもわかりやすい。でも、この褒め方は構造的に脆いのです。

なぜかというと、比較の基準が自分の外にあるからです。

クラスで一番だったとしても、次にもっとできる子が転校してきたら、その瞬間に「一番」は崩れます。〇〇ちゃんに勝ったとしても、別の場面で負けたら、喜びはそのまま落胆に反転します。

つまり、他者比較による自信は、常に他者によって壊される可能性がある。

1998年の研究でも、能力を褒められた子どもは「学ぶこと」より「よく見られること」に意識が向きやすくなることが示されました。他者との比較で褒めることは、この傾向をさらに強めます。

比べるなら、前回のその子と比べるほうがずっと健全です。

「前より字がていねいになったね」

「この前はここで止まったけど、今日は最後まで行けたね」

「先週よりも、自分で気持ちを切り替えるのが早くなった気がする」

この言い方だと、成長の基準がその子自身の中にできます。外がどう変わっても揺らがない。そして何より、「自分はちゃんと前に進んでいるんだ」という実感が持てます。


「努力を褒める」と「苦労を美化する」は違う

ここは混同されやすいところなので、はっきり書いておきます。

「努力を褒めましょう」という話を聞くと、「頑張っていること自体を褒めればいい」と解釈する人がいます。すると、「頑張ったね」「えらいね」「つらかったのにすごいね」と、苦労したこと自体を称えるような言い方になりやすい。

でも、これは少し違います。

たとえば、非効率なやり方をずっと繰り返していて、結果が出ていない子に「頑張ってるね、えらいよ」と言い続けると、子どもは「このままでいいんだ」と思ってしまうことがあります。本当はやり方を見直す必要があるのに、「頑張っていること」自体が褒められているから、やり方を変える動機が生まれない。

本当に認めたいのは、苦しんだ量ではありません。

自分で工夫したこと。やり方を修正したこと。うまくいかないときに別の方法を試したこと。必要なときに誰かに助けを求めたこと。そして、それらを継続したこと。

つまり、「努力の方向と中身」です。

「頑張ったね」という言葉を使うこと自体は悪くありません。でも、それだけで止めると漠然としすぎます。「何をどう頑張ったのか」まで言えたとき、初めてその言葉は子どもの中に残るものになります。

たとえば、「頑張ったね」で終わるのではなく、「あの問題、最初のやり方で詰まったあと、図を描いてみようって自分で切り替えたでしょう。あれがよかった」まで言う。この具体性が、声かけの質を分けます。


年齢によって届く言葉は変わる

幼児から中学生まで年齢別に並んだ子どもたちの成長を表すフラットデザインイラスト

褒め方の方向性は同じでも、年齢によって言い方の粒度やトーンは調整が必要です。

幼児(2歳から5歳くらい)

この時期は、短く、すぐに、目の前の行動について返すのが基本です。

「自分ではけたね」

「最後まで持てたね」

「片づけてくれたんだ、助かった」

「それ、どうやって作ったの? 教えて」

「崩れちゃったね。でも最後まで積もうとしてたね」

「『手伝って』って言えたね。それでいいんだよ」

「ボタン、時間かかったけど自分で留められたね」

長い説明や抽象的な褒め言葉は、この年齢にはあまり届きません。「すごいね」「えらいね」よりも、「自分で〇〇したね」のほうが、何を褒められているのかが伝わります。

「どうやって作ったの?」のような問いかけは、厳密には褒め言葉ではありませんが、子どもの行動に関心を持っていることが伝わる点で、褒めるのと同じような効果があります。また、うまくいかなかった場面(積み木が崩れた、絵がはみ出したなど)でも、結果ではなく「やろうとしていたこと」を拾ってあげると、子どもは「失敗しても見てもらえる」という感覚を持ちやすくなります。

2013年のGundersonらの研究では、1歳から3歳頃に親が「プロセスほめ」(やり方や努力に向けた褒め言葉)を多く使っていた家庭では、5年後に子どもが「能力は努力で変えられる」という考え方を持ちやすい傾向があったと報告されています。ただし、これは観察研究であり、褒め方が直接の原因だったかどうかまでは断定できません。それでも、幼児期の声かけが思った以上に先まで影響する可能性を示唆する研究として、参考になります。

また、同じ研究の中で、「才能ほめ」が直接的に固定的な考え方を予測したわけではなかった、という結果も出ています。つまり、「才能ほめを一言でも言ったら取り返しがつかない」というほど極端な話ではありません。幼い子に対しても、全体として「プロセスに目を向ける声かけ」を増やしていけばいい、くらいの構えで十分です。

小学生(6歳から12歳くらい)

この時期になると、子どもは自分の行動を振り返る力が少しずつ育ってきます。前回との比較も理解できるようになります。

「前より計算がていねいになったね」

「今日は途中で投げなかったね」

「自分で間違いに気づいて直してた。あれ、なかなかできないよ」

「うまくいかなかったけど、やり方を変えてもう一回やったのはよかった」

この年齢では、結果と過程をセットで伝えるのが効きやすいです。「100点だったね。前の範囲のときに毎日少しずつやってたのが出たんだと思うよ」のように、結果をまず受け止めてから、過程に触れる。この順番だと、子どもは「結果を見てもらえた」という満足を得たうえで、過程の話も素直に受け取れます。

もう一つ、この年齢で意識したいのは、「失敗を修正する力」を褒めることです。間違えたこと自体ではなく、間違えたあとにどうしたかを拾う。これは、失敗を恐れにくい心の育ち方に直結します。

中学生以降

中学生以上になると、空疎な褒め言葉は一瞬で見抜かれます。「すごいね」「えらいね」を連発すると、「適当に言ってるな」と思われて終わりです。

この年齢で大事なのは、褒めるというより、「ちゃんと見ている」と伝えることです。

「今回、ミスしたあとに崩れなかったね。前はそこで全部嫌になってたでしょう」

「説明の組み立てが前より整理されてた。伝わりやすくなった」

「今日の発表、声の出し方が安定してた。練習したんでしょう」

「しんどかったと思うけど、期限に間に合わせたのは事実だよ」

中学生以上の子どもは、褒められることよりも、認められることを求めています。そして「認められる」とは、「自分がやったことを、正確に見てくれている人がいる」という実感です。

だから、この年齢になるほど観察の精度が問われます。「何がよかったか」をぼんやりとではなく、具体的に、正確に言い当てる。それができたとき、言葉は少なくても十分に届きます。

逆に、思春期の子どもに対して的外れなポイントで褒めると、「見てないくせに適当なこと言うな」という反発を買います。これは褒めないよりもまずい結果を生むことがあるので、注意が必要です。


完璧な褒め方はない、という前提で

ここまで読んで、「気をつけることが多すぎて、何も言えなくなりそうだ」と感じた方もいるかもしれません。

それは困ります。

はっきり言っておくと、完璧な褒め方はありません。毎回正解の声かけをする親もいません。

つい「すごいね」と言ってしまうこともある。「頭いいね」が口をついて出ることもある。疲れているときに雑な褒め方しかできないこともある。それで子どもが壊れることはありません。

研究が示しているのは、「一回の褒め言葉で子どもの未来が決まる」という話ではなく、「日常的な声かけの傾向が、子どもの学びに対する姿勢にゆるやかに影響する」という話です。

だから、一回一回の言葉を完璧にしようとするのではなく、全体の傾向として、才能のラベル貼りより過程を見る方向に少し寄せていく。それだけで十分です。

私自身、塾講師をしていたときに完璧な声かけができていたかといえば、全然そんなことはありません。「すげえな」と雑に言ったこともあるし、逆に丁寧に言いすぎて子どもに「先生、長い」と言われたこともあります。


褒め方で人生は決まらない。でも、声かけには意味がある

親子が穏やかに並んで歩いている後ろ姿のフラットデザインイラスト

最後に、私の考えをまとめます。

子どもの成長には、家庭の空気、学校での経験、友人関係、その子の気質、成功体験や失敗体験など、たくさんの要素が絡みます。褒め方はそのうちの一つにすぎません。褒め方を変えただけで子どもが別人のように変わる、ということは、正直に言ってほとんどありません

でも、毎日の声かけは確かにそこにあります。朝起きてから夜寝るまでの間に、親は子どもに何十回と言葉をかけます。その一つ一つは小さいけれど、積み重なったとき、子どもが失敗をどう受け止めるか、難しいことにどう向き合うか、自分自身をどう評価するかに、少しずつ影響を与えていく。

その影響を、少しでもましな方向にしたい。私はそう思って、この記事を書きました。

頭の良さをラベルのように貼る褒め方ではなく、
大げさで中身のない褒め方ではなく、
他人との比較で気分を上げる褒め方ではなく、
結果だけを見て終わる褒め方ではなく、

その子が自分で動かした部分を、静かに、具体的に、言葉にする。

「頭がいいね」の代わりに、
「よく見て、自分でやり方を変えていたね」
と言えること。

私はそこを目指したいと思っています。

参考までに。それでは!


この記事で参照した主な研究

  • Mueller, C. M., & Dweck, C. S. (1998). Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance. Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 33-52.
  • Henderlong, J., & Lepper, M. R. (2002). The effects of praise on children’s intrinsic motivation: A review and synthesis. Psychological Bulletin, 128(5), 774-795.
  • Baumeister, R. F., Campbell, J. D., Krueger, J. I., & Vohs, K. D. (2003). Does high self-esteem cause better performance, interpersonal success, happiness, or healthier lifestyles? Psychological Science in the Public Interest, 4(1), 1-44.
  • Gunderson, E. A., Gripshover, S. J., Romero, C., Dweck, C. S., Goldin-Meadow, S., & Levine, S. C. (2013). Parent praise to 1- to 3-year-olds predicts children’s motivational frameworks 5 years later. Child Development, 84(5), 1526-1541.
  • Brummelman, E., Thomaes, S., Orobio de Castro, B., Overbeek, G., & Bushman, B. J. (2014). “That’s not just beautiful—that’s incredibly beautiful!”: The adverse impact of inflated praise on children with low self-esteem. Psychological Science, 25(3), 728-735.
  • Brummelman, E., Nelemans, S. A., Thomaes, S., & Orobio de Castro, B. (2017). When parents’ praise inflates, children’s self-esteem deflates. Child Development, 88(6), 1799-1809.
  • Li, Y., & Bates, T. C. (2019). You can’t change your basic ability, but you work at things, and that’s how we get hard things done: Testing the role of growth mindset on response to setbacks, educational attainment, and cognitive ability. Journal of Experimental Psychology: General, 148(9), 1640-1655.
  • Orth, U., & Robins, R. W. (2022). Is high self-esteem beneficial? Revisiting a classic question. American Psychologist, 77(1), 5-17.
  • Bennett-Pierre, G., Chernuta, T., Altamimi, R., & Gunderson, E. A. (2024). Effects of praise and “easy” feedback on children’s persistence and self-evaluations. Journal of Experimental Child Psychology, 247, 106032.

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