「優性」「劣性」という言葉を聞くと、少しこわく感じるかもしれません。
優性は「優れている」、劣性は「劣っている」という意味に見えます。漢字だけ見ると、そう思ってしまうのも自然です。
でも、理科で出てくる優性・劣性は、良い悪いの話ではありません。
優性は、優れているという意味ではありません。劣性も、劣っているという意味ではありません。
ここを間違えると、遺伝の話が一気にややこしくなります。
この記事では、中学生でも理解できるように、優性・劣性の意味をかなりシンプルに説明します。難しい病気の遺伝や、専門的な遺伝子の話までは深く入りません。
まずは、学校の理科で出てくる「特徴がどう表に出るか」を理解することを目標にします。
優性・劣性とは、特徴の「出方」の話

まず、いちばん大事なところからです。
優性・劣性とは、親から受け継いだ特徴が、体にどう表れるかを説明する言葉です。
たとえば、ある特徴について、Aという型とaという型があるとします。
Aとaを両方持っているときに、Aの特徴が表に出るなら、Aはaに対して優性です。
反対に、aの特徴が、aが2つそろったときに表に出るなら、aは劣性です。
ここで大事なのは、Aが「強いから勝った」わけではないことです。aが「弱いから負けた」わけでもありません。
ただ、Aとaが一緒にあるときは、Aの特徴の方が表に出る。まずは、それくらいに考えれば大丈夫です。
たとえば、声が大きい人が教室で目立つとしても、その人が他の人より優れているという意味ではありません。ただ、目立ちやすいだけです。
遺伝の優性も、それに少し似ています。優れているから表に出るのではなく、組み合わせの中で表に出やすいということです。
親からは、同じ特徴について2つの型を受け継ぐ

人は多くの場合、同じ特徴について、父親から1つ、母親から1つ、合計2つの型を受け継ぎます。
ここでは、難しい言葉を使わずに「型」と呼ぶことにします。
たとえば、ある特徴について、父親からA、母親からaを受け継ぐことがあります。この場合、その人の組み合わせはAaです。
父親からA、母親からAを受け継げばAAになります。父親からa、母親からaを受け継げばaaになります。
つまり、組み合わせは大きく分けると、AA、Aa、aaの3つです。
ここで、Aがaに対して優性だとすると、表に出る特徴は次のようになります。
| 組み合わせ | 表に出る特徴 |
|---|---|
| AA | Aの特徴 |
| Aa | Aの特徴 |
| aa | aの特徴 |
AAなら、Aの特徴が出ます。これはわかりやすいです。
Aaでも、Aの特徴が出ます。Aとaを両方持っていても、表に出るのはAの特徴です。
aaになると、aの特徴が出ます。aが2つそろったので、aの特徴が表に出るわけです。
この表がわかると、優性・劣性の基本はかなり見えてきます。
優性は、Aのように、Aとaが一緒にあるときでも表に出る特徴です。劣性は、aのように、同じ型が2つそろったときに表に出る特徴です。
今は「顕性」「潜性」という言い方も使う

ここまで、優性・劣性という言葉で説明してきました。
ただし、今の教科書や資料では、「優性」を「顕性」、「劣性」を「潜性」と呼ぶこともあります。
なぜ言い方が変わってきたのでしょうか。
理由は、優性・劣性という言葉が誤解されやすいからです。
優性と聞くと、優れているように感じます。劣性と聞くと、劣っているように感じます。
そこで、意味が伝わりやすいように、顕性・潜性という言い方も使われるようになっています。
顕性の「顕」は、表にあらわれるという意味です。潜性の「潜」は、潜んでいる、かくれているという意味です。
つまり、次のように考えるとわかりやすいです。
| 昔からの言い方 | 今の言い方 | 意味 |
|---|---|---|
| 優性 | 顕性 | 表に出やすい |
| 劣性 | 潜性 | 条件がそろうと表に出る |
中学生のうちは、まずこの対応を覚えておくとよいです。
優性は顕性。劣性は潜性。
このセットで覚えると、教科書やテストで言い方が違っても混乱しにくくなります。
表に出ていないaは、消えたわけではない

Aaの人は、表に出ている特徴だけを見ると、Aの特徴を持っているように見えます。
では、aはどこへ行ったのでしょうか。
答えは、消えていません。
Aaの人は、Aもaも持っています。ただ、表に出ているのがAの特徴だというだけです。
これは、スマホの設定に少し似ています。画面に出ている設定だけを見ると、その設定しかないように見えます。でも、奥のメニューには、まだ別の設定が残っていることがあります。
遺伝でも同じです。表に見えていない型が、体の中に残っていることがあります。
だから、親には見えていない特徴が、子どもに出ることがあるのです。
親にないように見える特徴が、子どもに出る理由

ここが、遺伝でよくつまずくところです。
「親にその特徴がないのに、どうして子どもに出るの?」と思うことがあります。
でも、親に「見えていない」だけで、その特徴につながる型を持っている場合があります。
たとえば、父親も母親もAaだったとします。
父親も母親も、表に出ているのはAの特徴です。でも、2人ともaも持っています。
この2人から子どもが生まれる場合、組み合わせは次のように考えられます。
| 母 A | 母 a | |
|---|---|---|
| 父 A | AA | Aa |
| 父 a | Aa | aa |
この場合、AAが25%、Aaが50%、aaが25%という形で考えられます。
AAとAaでは、Aの特徴が表に出ます。aaでは、aの特徴が表に出ます。
つまり、父親にも母親にも見えていなかったaの特徴が、子どもに出ることがあるのです。
ただし、ここで注意があります。
25%というのは、「4人子どもがいたら必ず1人はaaになる」という意味ではありません。毎回、その可能性があるという意味です。
サイコロを4回ふっても、必ず1回は1が出るとは限りませんよね。それと少し似ています。
血液型は、少しだけ応用編

身近な例として、血液型があります。
ここまでは、Aとaという記号を使って説明してきました。一方、血液型ではA、B、Oという別の記号が出てきます。
同じAという文字が出てきますが、ここまでのA/aの例とは別の話だと思ってください。少しややこしいので、ここは気持ちを切りかえて読むとわかりやすいです。
ABO式血液型では、A、B、Oの組み合わせで血液型が決まります。
AとOを持っている人はA型になります。BとOを持っている人はB型になります。OとOを持っている人はO型になります。
ここだけ見ると、OはAやBと一緒にあると表に出にくいことがわかります。
ただし、AとBを持っている人はAB型になります。AとBは、どちらか一方だけが表に出るのではなく、両方が表に出ます。
このように、血液型は少し応用編です。
「Aが勝つ」「Oが負ける」という話ではありません。組み合わせによって、表に出る特徴が変わるという話です。
血液型は身近なので例にしやすいですが、性格の話とは別です。ここでは、あくまで遺伝の組み合わせの例として考えてください。
人間の特徴は、Aとaだけで全部決まるわけではない
ここまで、Aとaを使ってかなり単純に説明してきました。
でも、人間の特徴は、すべてがAとaだけで決まるわけではありません。
たとえば、身長、体格、目の色、肌の色、体質などは、たくさんの遺伝子が関わることがあります。さらに、食事、運動、生活環境、年齢なども関係します。
つまり、優性・劣性は、遺伝を理解するための入り口です。
入り口としてはとても大切ですが、それだけで人間のすべてを説明できるわけではありません。
ここを覚えておくと、「親がこうだから子どもも必ずこうなる」と決めつけずにすみます。
遺伝は、思っているより少し複雑です。でも、Aとaの基本がわかると、かなり理解しやすくなります。
まとめ
優性・劣性とは、特徴の良い悪いを表す言葉ではありません。
親から受け継いだ型の組み合わせによって、どの特徴が表に出るかを説明する言葉です。
今の言い方では、優性は「顕性」、劣性は「潜性」と呼ばれることもあります。
顕性は、表に出やすい特徴です。潜性は、条件がそろうと表に出る特徴です。
Aとaの例で考えると、AAとAaではAの特徴が出ます。aaではaの特徴が出ます。
Aaの人は、aを持っていないわけではありません。aは体の中に残っています。ただ、表に出ていないだけです。
そのため、親には見えていなかった特徴が、子どもに出ることがあります。
優性・劣性という言葉を見ると、どうしても「良い」「悪い」のように感じてしまいます。でも、理科での意味は違います。
優れているかどうかではなく、表に出るかどうか。
まずは、そう考えるとかなりわかりやすくなると思います。
よくある質問
優性は、優れているという意味ですか?
いいえ。優性は、優れているという意味ではありません。
2つの型が組み合わさったときに、表に出やすい特徴を表す言葉です。今の言い方では、顕性と呼ばれることもあります。
劣性は、劣っているという意味ですか?
いいえ。劣性は、劣っているという意味ではありません。
表に出にくいことがある特徴を表す言葉です。今の言い方では、潜性と呼ばれることもあります。
顕性と潜性は、優性と劣性と同じですか?
基本的には、顕性が優性、潜性が劣性に対応します。
顕性は「表にあらわれやすい」、潜性は「かくれていることがある」と考えるとわかりやすいです。
Aaのaは、なくなったのですか?
なくなっていません。
Aaの人は、Aもaも持っています。ただ、表に出ているのがAの特徴だというだけです。aは次の世代に受け継がれることがあります。
親にない特徴が子どもに出るのはなぜですか?
親に見えていないだけで、その特徴につながる型を持っていることがあるからです。
父親も母親もAaの場合、子どもがaaになることがあります。その場合、親には表に出ていなかったaの特徴が、子どもに出ることがあります。
25%なら、4人に1人は必ずそうなるのですか?
いいえ。必ずそうなるわけではありません。
25%は、毎回その可能性があるという意味です。4回サイコロをふっても、必ず1が出るとは限らないのと似ています。
血液型も優性・劣性で決まるのですか?
ABO式血液型には、優性・劣性だけでなく、AとBがどちらも表に出るような関係もあります。
AとOならA型、BとOならB型、OとOならO型、AとBならAB型になります。少し応用編として考えるとよいです。
参考URL
教育出版「『顕性形質』と『潜性形質』について」
https://www.kyoiku-shuppan.co.jp/textbook/chuu/rika/document/ducu3/qa/qa-019.html
日本医学会「遺伝学用語改訂に関する最終報告」
https://jams.med.or.jp/glossary_committee/doc/2021material_s3.pdf
NCBI Bookshelf「ABO Blood Group」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK100894/

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