「スマホばかり見るな」「ショート動画をやめて、早く寝ろ」
そう言ってくる大人は、正直うっとうしいですよね。好きなものを見ているときに横から口を出されれば、腹も立ちます。
でも、君がやめどきを見失い、毎晩のように寝る時間を削っているなら、その言葉は必要です。嫌われるかもしれなくても、言うべきことを言ってくれる。そういう大人を、私は大事にした方がいいと思います。
「好きにしていいよ」と言ってくれる大人は、一緒にいて楽です。けれど、居心地のよさと、君のためになるかどうかは別の話です。君が寝不足になり、やめたいのにやめられなくなっていても止めない人を、ただ優しいという理由で信用していいのでしょうか。
君は、自分の子どもにも毎日何時間も見てほしい?

少し未来の話をします。君が大人になって、子どもを育てる立場になったと想像してください。
その子は学校から帰るなり、ショート動画を見始めます。ご飯を食べるときもスマホ。寝る前もスマホ。「あと1本だけ」と言いながら、気づけば何時間も経っています。読むはずだった本は開かない。練習したかったギターにも触らない。朝は眠そうで、家族が話しかけても生返事です。
君は、その子に「いいぞ、その調子で毎日見続けなさい」と言えるでしょうか。
「本人が楽しいなら、それでいい」と放っておけますか。「友達もみんな見ているから」と、何時間でも見せるでしょうか。
どこかで「もうやめなさい」と言いたくなるはずです。すると、その子は君に言います。「うるさいな。自分だって昔、見ていたくせに」
自分の子どもには見続けてほしくない。それなら、今の自分が同じ使い方をしていることを、どう考えますか。
君を心配する大人は、楽しみを奪いたいだけではありません。ほかのことも経験してほしいのです。本を読む。体を動かす。楽器を弾く。友達や家族と話す。そして、ちゃんと寝る。画面の外にも、君が楽しめることや、できるようになることがあるからです。
動画を見ること自体が悪いわけではありません。ただ、見たい動画を楽しむことと、やめようと思っていたのに何時間も過ぎることは違います。
今日やりたかったことが、明日に回った。その明日も、また動画で終わった。君を心配する大人が止めたいのは、そういう毎日です。
黙っていれば、感じのいい大人でいられる

誰かに注意するのは面倒です。黙っていれば、その場は丸く収まります。
言い方がきつい。余計なお世話だ。家庭の教育に口を出すな。そう言われるかもしれません。親でも先生でもない大人なら、なおさらです。
もちろん、暴言や威圧を「君のため」で正当化してはいけません。それでも、角が立つことを恐れて必要な注意まで引っ込めれば、困った使い方はそのまま続きます。
たとえば親戚の集まりで、君がずっとスマホを見ている。「そんなにやめられないなら、いったんアプリを消してみろ」と言う大人がいたら、君はむっとするでしょう。場の空気も悪くなるかもしれません。
その大人だって、黙って笑っていれば楽です。「大きくなったね」と言っておけば、感じのいい親戚でいられます。君の翌朝を気にせず、その日の機嫌だけ取って帰ることもできます。
それでも、言う人がいる。
君の使い方を心配して、嫌がられることも言ってくれる人です。そういう人が、君の周りに何人いるでしょうか。
「うるさい人」を全部遠ざけたら、周りには君が喜ぶことを言う人ばかり残るかもしれません。それは気楽な環境です。でも、自分が困った使い方をしているとき、誰も止めてくれない状況を、本当に恵まれていると呼べるでしょうか。
親の皆さん。「連絡用」のはずでしたよね

ここで、大人にも言いたいことがあります。
子どもがスマホをやめられず、夜更かしを続けている。その環境を用意したのは、誰でしょうか。
塾の帰りや送り迎えの連絡に、スマホが必要な理由は分かります。ですが、連絡手段を持たせることと、深夜までショート動画を見放題にしておくことは、別の判断です。
「みんな持っている」は、持たせる理由にはなります。毎晩、寝る時間を削ってまで使わせる理由にはなりません。
そして、「子どもの自主性」は便利な言葉です。使い方を見守り、困ったときには一緒に見直しているなら、その言葉には中身があります。でも、困っているのを知りながら何もしないことまで自主性と呼ぶなら、ずいぶん立派な名前をつけた放置です。
愛情がある。それは分かりました。では、寝不足になっている子どものために、何を変えたのでしょうか。
国や企業に対策を求めることにも、理由があります。家庭だけでは対処しづらい問題もあるでしょう。ただ、家庭でできる見直しまで、制度ができるのを待つ必要はありません。
寝るときはスマホをリビングに置く。何時に終えるかを決める。使っているサービスや端末の設定を一緒に見直す。必要な連絡はどう受け取るかを話し合う。今日から変えられることはあります。
法律が施行されるの待つつもり?それっていつになるか分かってるの?
ルールを決め、話し合い、設定も試したのに、うまくいかない家庭を責めたいわけではありません。困っているなら、学校や専門家など、家庭の外の助けも借りてください。うまくいかないことと、向き合っていないことは違います。
問いたいのは、問題に気づいていながら何も変えず、「社会のせい」「国のせい」で済ませてしまう大人の態度です。国への要求は大切です。でも、それで目の前の子どもへの責任がなくなるわけではありません。
君を否定しない、優しい大人は本当にいい大人か?

最後に、君へ戻ります。
君のすることを否定しない。好きなだけスマホを見ても、何も言わない。いつでも「いいんじゃない」と受け入れてくれる。そんな大人は、一緒にいて楽でしょう。
でも、自分を否定しない人が、本当に自分のためになる人なのでしょうか。
中学生の君なら、分かりますよね。本当は、もう分かっているんじゃないですか。
寝ようと思っていたのに、また1時間過ぎた。やりたかったことは何も進まなかった。見た動画の中身も、ろくに覚えていない。自分でも「今日もクソ動画を消費して終わったな」と思っている。なのに翌日も、また同じことをしている。
その時間の使い方を「このままでいい」と、胸を張って言えるでしょうか。
そこへ大人が「もうやめろ」と言ってきたら、腹が立つかもしれません。でも、腹が立つのは、相手が間違っているからでしょうか。それとも、自分でも気にしていたことを言い当てられたからでしょうか。
君が自分でもよくないと思っている使い方を、何でも肯定してくれる人。その人の言葉で気分は楽になるでしょう。でも、明日も同じことを繰り返すなら、君の困りごとは何も変わっていません。
君の人格を傷つけずに、よくない使い方を止めることはできます。「その使い方はよくない」と言われただけで、君自身が否定されたと決めつけなくていいのです。
もちろん、怒鳴って八つ当たりする大人を信用しろとは言いません。「君のため」は、偉そうにするための許可証ではありません。君の事情を聞き、変える方法も一緒に考えてくれるか。その行動を見てください。指摘が一つ当たっていたからといって、その人の言うことを何でも信じる必要もありません。
「自分だってスマホばかり見ているくせに」と言い返したくなることもあるでしょう。でも、口げんかで勝ったところで、君の寝不足は消えません。昨夜の2時間も返ってきません。
まずは、夜のスマホを寝室の外に置いてみる。必要な連絡をどう受け取るかは、家の人と決めておく。目覚まし代わりにしているなら、別の目覚まし時計を用意する。寝る時間や翌朝の様子、空いた時間に何ができたかを見てみる。
自分でも変えたいと思っているなら、「うるさい」で話を終わらせず、「じゃあ、どうしたらやめられるかな」と聞いてみてください。そこで一緒に考えてくれる大人なら、頼っていいと思います。
君の機嫌を取るだけなら、君が喜ぶことを言えば済みます。君に嫌がられることも言い、変えるのを手伝うには、もう少し手間がかかります。
君が喜ぶことだけを言う人と、君の時間を守ろうとしてくれる人。君が大事にするべきなのは、どちらでしょうか。

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