氷を入れたコップを机に置いておくと、いつの間にか外側に水滴がついています。拭いてもまたぬれて、机に水の輪ができることもあります。
この水は、どこから来たのでしょうか。コップの中の水が、ガラスを通り抜けてきたのでしょうか。
水滴のもとは、周りの空気に含まれていた水蒸気です。冷やされて液体の水になり、コップの表面に現れます。この現象を「結露(けつろ)」といいます。
でも、同じように冷たい飲み物を入れても、真空断熱の水筒は外側がぬれにくいですよね。なぜ違いが生まれるのか、順を追って考えてみましょう。
見えないけれど、空気の中にも水がある
雨も降っていない部屋の中に、水があると言われると、不思議に感じるかもしれません。
たとえば、洗濯物を干すと、ぬれていた服が乾きます。服についていた水は、どこへ行ったのでしょうか。
水は少しずつ気体に変わり、周りの空気へ移っています。液体の表面から気体に変わることを「蒸発(じょうはつ)」といい、水が気体になったものを「水蒸気(すいじょうき)」といいます。水は、沸騰させなくても蒸発します。
水蒸気そのものは目に見えません。服から水が見えなくなっても、水そのものが消えてなくなったわけではないのです。
お湯の上に見える白い湯気は?
水蒸気と聞くと、お湯の上に見える白い湯気を思い浮かべる人もいるかもしれません。
白い湯気の正体は、水蒸気が冷やされてできた、とても小さな水滴です。気体の水蒸気と、液体の水滴は区別します。
コップにつく水滴も、見えない水蒸気が液体に変わったものです。湯気では小さな水滴が空中に浮かび、コップでは表面についている、という違いがあります。
冷たいコップの周りで、何が起きている?

コップに氷水を入れると、まずコップの壁が冷えます。すると、外側の表面に触れる空気も冷やされます。
その空気が十分に冷えると、含まれていた水蒸気の一部が液体に変わり、表面に小さな水滴ができます。気体が液体になる変化を「凝結(ぎょうけつ)」といいます。
「蒸発」は液体から気体へ、「凝結」は気体から液体へという、反対向きの変化です。結露は、この凝結によって物の表面などに水滴がつく現象です。
ひび割れやこぼれがなければ、コップの外側の水は、中の飲み物が漏れたものではありません。コップが水を作り出したのでもなく、もともと空気中にあった水が姿を変えています。
水滴ができ始める温度を「露点」という
では、コップが部屋の空気より少しでも冷たければ、水滴がつくのでしょうか。
実は、そうとは限りません。空気に含まれる水蒸気の量によって、水滴ができ始める温度が違うからです。
気圧をほぼ一定に保って、空気中の水蒸気を増やしたり減らしたりせずに空気を冷やしていくと、やがて水蒸気が凝結し始めます。このときの温度が「露点(ろてん)」です。
コップの外側の表面が周りの空気の露点より低くなると、表面付近の空気も冷やされ、水滴ができやすくなります。表面が露点より高ければ、ふつうは結露しません。
ここで比べるのは、中の飲み物の温度ではなく、空気に触れている外側の表面温度です。あとで水筒の仕組みを考えるときにも、この違いが大切になります。
「湿度60%」の空気では、何度くらいで結露する?
「湿度60%」だけでは、露点は決まりません。気温も必要です。室温25℃、湿度60%なら、露点は約17℃になります。
なぜ、気温と湿度の両方が関係するのでしょうか。まずは、湿度の意味を考えてみましょう。
湿度は、飽和した状態を100%として比べる
天気予報などで聞く「湿度」は、空気の湿り具合を表す数字です。ふつうは「相対湿度(そうたいしつど)」を指します。
水の表面では、液体から気体になる蒸発だけでなく、水蒸気が液体に戻る変化も起きています。温度を一定に保ったとき、この二つの変化がつり合った状態を「飽和(ほうわ)」といいます。
一定の体積で比べると、その温度で飽和したときの水蒸気の量が「飽和水蒸気量」です。湿度は、この量を100として、実際の水蒸気の量がどれくらいかを表します。
つまり湿度60%とは、同じ温度・同じ体積で飽和するときの60%にあたる水蒸気があるという意味です。「空気の60%が水蒸気」ということではありません。
温度が下がると、飽和水蒸気量も小さくなります。そのため、水蒸気を加えなくても、空気を冷やすだけで湿度は上がり、露点では100%に達します。さらに冷えると、水蒸気の一部が液体になって現れます。
ただし、空気が水を入れる容器のように小さくなり、水があふれるわけではありません。水蒸気はほかの気体と混ざって存在し、温度に応じて液体の水とのつり合い方が変わります。
同じ部屋でも、コップの表面温度で結果が変わる

室温25℃、湿度60%の部屋に戻りましょう。この部屋で、外側の表面温度が違う二つのコップを考えてみます。
| コップの外側の表面温度 | 露点約17℃との関係 | 水滴のでき方 |
|---|---|---|
| 12℃ | 露点より低い | 水滴ができやすい |
| 20℃ | 露点より高い | ふつうは結露しない |
どちらも室温25℃より冷たいのに、結果は同じではありません。「冷たいかどうか」だけでなく、「露点より低いかどうか」がポイントなのです。
実際に水滴が見えるまでには、表面の状態や時間も関係します。露点に達した瞬間、必ず大きな水滴が見えるわけではありません。
湿度が高いと、少し冷やしただけでも結露しやすい
同じ気温で比べると、湿度が高い空気ほど水蒸気が多く、露点も高くなります。少し温度が下がるだけで結露の条件に達しやすくなるのです。
今度は室温を25℃、コップの外側の表面温度を15℃にそろえ、湿度だけを変えてみます。
| 室温25℃での湿度 | 露点の目安 | 表面温度15℃のコップでは |
|---|---|---|
| 40% | 約10℃ | 露点より高いので、ふつうは結露しない |
| 60% | 約17℃ | 露点より低いので、水滴ができやすい |
| 80% | 約21℃ | 露点より低いので、水滴ができやすい |
同じ冷たさのコップでも、部屋の空気の状態で水滴のでき方が変わるわけです。
ここに示した露点は、気温と湿度から気象で用いられる式で求めた目安で、実際に部屋で測った値ではありません。また、気温が違う場所どうしでは、「湿度50%」という数字が同じでも、水蒸気の量が同じとは限りません。
真空断熱の水筒は、外側が冷えにくい

ここまで分かると、冒頭の水筒の疑問にも答えられます。中の飲み物が冷たくても、外側が露点より冷たくならなければ、そこには結露しにくいはずです。
普通のコップでは、温かい周りの空気やコップの壁から、冷たい飲み物へ熱が移ります。熱は、温度の高い方から低い方へ移るためです。コップの壁も熱を失い、外側まで冷えていきます。
真空断熱の水筒は、壁が二重になっています。そして、内側と外側の壁の間から、気体をほとんど抜いてあります。このすき間が「真空の層」です。
壁の間に気体がほとんどなければ、そこを気体が熱を伝えたり、流れながら熱を運んだりする働きが小さくなります。このように、熱を移りにくくすることを「断熱(だんねつ)」といいます。
そのため、冷たい飲み物へ熱が移りにくくなり、外側の壁も冷えにくくなります。 外側が周りの空気の露点より高いままなら、水滴はつきにくくなります。
真空なのは二重の壁の間であって、水筒の外側に空気がないわけではありません。また、金属製なら何でも結露しないわけでもありません。壁の構造によって、外側の冷え方が変わるのです。
空気がなくても移る熱を減らす工夫や、ふたに残る熱の通り道については、魔法瓶はなぜ保温も保冷もできる?水筒の仕組みで詳しく説明しています。
水筒に水滴がついていたら、故障なの?
すべての水筒が真空断熱構造とは限りません。また、真空断熱の水筒でも、ふたや飲み口付近は胴体と構造が違うため、冷え方も違います。
容器全体が冷えた場所から暖かく湿った場所へ移った場合は、外側自体が冷えていて、結露することもあります。注ぐときにこぼれた水や、ぬれた手で触れた水がついている場合もあるでしょう。
水滴があるだけで、故障とは決められません。ただ、いつもと違って本体の外側に中身の冷たさや熱さが強く伝わる場合は、保温・保冷の性能が落ちている可能性があります。使用を控え、家の人と一緒に説明書を確認し、メーカーに相談してください。
故障かどうかを調べるために、熱い飲み物を入れて外側を触るのはやめましょう。外側が熱くなり、やけどをするおそれがあります。
二つのコップで、水滴のでき方を比べてみよう

結露の様子は、家庭でも観察できます。同じ材質・形・大きさで、水が漏れない透明なコップを二つ、乾いた皿を二枚、氷水、室温に近い水、外側を拭く布を用意します。
- 一つのコップに氷水、もう一つに室温に近い水を、同じくらいの量だけ入れます。あふれない量にしましょう。
- 注いだ水が残らないよう、それぞれの外側をよく拭き、乾いた皿に一つずつ置きます。
- 直射日光やエアコンの風が直接当たらない場所に並べ、数分おきに外側を見比べます。
- 最初に水滴が見えた時刻や、水滴がついた場所を記録します。温度計や湿度計があれば、そのときの室温と湿度も記録しておきましょう。
氷水のコップに水滴が現れ、室温に近い水のコップには現れなければ、表面の冷え方と水滴の関係を観察できます。容器や置く場所をそろえるのは、温度以外の違いをできるだけ小さくするためです。
乾燥した日など、表面が露点まで冷えなければ、水滴が目立たないこともあります。水滴が見えなかった場合も、その日の条件と合わせて記録しましょう。こぼした水やぬれた手の跡とは区別し、ガラスの破損に気をつけてください。熱湯は使いません。
中の水に色をつけたら、外の水滴も色づく?
氷水に少量の食紅を入れると、外側の水滴は何色になるでしょうか。結果を予想してから、白い紙で外側の水滴を拭き取ってみましょう。
この観察で考えるのは、「中の色水が、そのまま外へ漏れたのではないか」という予想です。外の水滴に色がつかなければ、その予想とは合いません。色が移った場合は、注ぐときにこぼれた水などが混ざっていないか確認しましょう。
ただし、色がつかないことだけで、水が空気中から来たと証明できるわけではありません。二つのコップで見た冷え方との関係や、水蒸気が凝結する仕組みと合わせて考えてみてください。
水筒とも比べてみる
普通のコップと真空断熱の容器に同じ冷たい水を入れ、外側を比べる観察もできます。ただし、この比較では材質や形なども違います。どちらの断熱性能が何倍よいかを測る実験ではなく、外側の冷え方や水滴の様子を見る観察と考えてください。
なお、手で触った感覚だけでは、表面温度を正確に比べられません。その理由は、同じ温度なのに、金属が木より冷たく感じるのはなぜ?でも紹介しています。
金属のコップで、露点を調べてみよう

水滴ができる様子を観察したら、次は「何度ででき始めるか」も調べてみましょう。中学校の理科でも扱う、金属のコップを使った実験です。
用意するのは、壁が一重で薄い金属製のコップ、室温に近づけておいた水、別の容器に入れた氷水、水温を測れる温度計、かき混ぜる棒、乾いた布です。真空断熱や二重構造の容器は使いません。温度計の使い方を確認し、先生や家の人と一緒に行いましょう。
- 金属のコップに、室温に近い水を3分の1くらい入れます。外側をよく拭き、室温とはじめの水温を記録します。
- 氷水を少しだけ加え、棒で静かにかき混ぜます。水温を測りながら、外側の様子を見ます。
- まだくもっていなければ、氷水を少し加えて混ぜる操作を繰り返します。あふれそうになる前に止め、くもりが見えなかった場合も、その結果を記録します。
- コップの外側がくもり始めたら、そのときの水温を読み取り、記録します。この温度が、その場の空気の露点の目安になります。
氷水を一度にたくさん入れると、くもり始める温度を通り過ぎてしまいます。ゆっくり冷やし、最初のくもりを見つけることが大切です。コップに息をかけると、息に含まれる水蒸気の影響を受けるので、顔を近づけすぎないようにしましょう。温度計をかき混ぜる棒の代わりに使ってはいけません。
なぜ、金属のコップを使うの?
結露を考えるときに大切なのは、外側の表面温度でした。それなのに、この実験では中の水温を測っています。不思議ですよね。
金属は熱を伝えやすいため、壁が薄く一重のコップなら、かき混ぜながらゆっくり冷やすことで、水温と外側の表面温度を近づけられます。その性質を使い、水温から表面温度を見積もっているのです。
ただし、二つの温度がいつでも完全に同じになるわけではありません。冷やし方や、くもりを見つけるタイミングによっても結果は変わります。繰り返すときは、いったん室温に近い水に替え、外側を乾かしてから測り直します。測った値がどのくらいばらつくか、比べてみましょう。
同じ場所でも、別の日には露点が変わることがあります。先ほどの約17℃は室温25℃・湿度60%の例なので、実験でも必ず17℃になるわけではありません。
冬の窓につく水滴も、同じ仕組み
冬の朝、窓の室内側がぬれていることがあります。窓から雨が入ったわけではなくても、水滴はできます。
外の寒さで窓ガラスが冷え、その近くの室内の空気も冷やされます。ガラスの表面が室内の空気の露点より低くなると、水蒸気が凝結し、水滴がつきやすくなります。
コップは中の氷水によって、窓は外の寒さによって冷えます。冷える理由は違っても、「水蒸気を含む空気」と「冷たい表面」に注目すると、同じ仕組みで説明できるのです。
寒い屋外から暖かく湿った室内へ入ったときに、冷えたメガネがくもることもあります。これも、レンズの表面で室内の水蒸気が凝結する現象です。身の回りで水滴を見つけたら、どこが冷えているのか探してみましょう。
コースターを敷くと、結露も止まる?
コップの下に吸水性のあるコースターを敷けば、机に水が広がりにくくなります。では、コップの外側に水滴ができることも止まるのでしょうか。
コースターが受け止めるのは、すでにできた水滴です。机をぬらしにくくしますが、結露そのものを防ぐわけではありません。
水滴の発生を抑えるには、真空断熱の容器などを使って外側を冷えにくくする方法があります。容器にかぶせるスリーブやホルダーも、熱の移動を抑える助けになります。ただし、効果は素材や構造で変わり、ぬれた場合は乾かす必要があります。二重構造のグラスも、外側が冷えにくいように作られたものがあります。
また、同じ気温なら、除湿などで空気中の水蒸気を減らすと露点が下がり、結露しにくくなります。
「水滴ができにくくなる工夫」と「できた水滴で机をぬらさない工夫」は、役割が違うのですね。
まとめ
冷たいコップの外側の水滴は、周りの空気にあった水蒸気が液体に変わったものです。外側の表面が空気の露点より低くなると、結露しやすくなります。
真空断熱の水筒は、周りから冷たい飲み物へ熱が移りにくく、外側が冷えにくい構造です。そのため、同じ冷たい飲み物を入れても、普通のコップより水滴がつきにくくなります。
次にコップや窓の水滴を見つけたら、「水はどこから来たのか」「どの表面が冷えているのか」を考えてみてください。目に見える水滴から、見えない水蒸気の存在や、熱の移動をたどれます。
参考資料
気象庁「気温、湿度」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kion.html
文部科学省『小学校理科の観察、実験の手引き』第4学年「天気の様子」
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2012/01/12/1304649_15_1.pdf
学校図書『中学校理科教科書Web版』2年 p.202「空気中の水」
https://r7-kagaku.gakuto-plus.jp/2-4/1-2/2p202/
学校図書『中学校理科教科書Web版』2年 p.204(露点を調べる実験の方法)
https://r7-kagaku.gakuto-plus.jp/2-4/1-2/2p204/
環境省「気候変動適応法及び独立行政法人環境再生保全機構法の一部を改正する法律等の施行について」別紙7の露点算出式(PDF16ページ)
https://www.env.go.jp/content/000233035.pdf
サーモス「魔法びんの秘密」
https://www.thermos.jp/craftmanships/
サーモス「真空断熱カップ JDH-280CTSS」
https://www.thermos.jp/product/series/jdh-00ctss.html
サーモス『意外と知らない!? 水筒の豆知識』
https://www.thermos.jp/info/pdf/20250303100156.pdf
OpenStax『College Physics 2e』13.6 Humidity, Evaporation, and Boiling
https://openstax.org/books/college-physics-2e/pages/13-6-humidity-evaporation-and-boiling
資料確認:2026年11月5日

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